精神年齢を子どもに合わせる

子どもたちにわかりやすく伝えることに、国司さんはどんな工夫や注意をしているのだろうか。

一つは自分の精神年齢を相手に合わせることだという。

「精神年齢というのは、自分で決められるんです。回答者の先生方は、すぐに子どもたちの目線に合わせられます。例えば、アサガオのツルはどうして右巻きなのかという小学1年生の質問に対して、まずは自分がアサガオを育てていた小学1年生のころの記憶を呼び戻し、その体験を紹介します。それから長年培った研究のことをお話しするんです」

実際、国司さんも冒頭の5歳の子に対し、「実はね、おじさん、随分昔なんだけど、熱気球に乗ったことがあるんです。そしたらね、飛ぶっていうよりもね、フワって浮いた感じがした」と、自身が初めて気球に乗った時の話をしていた。

「その時のワクワク感とか、自分が昔やっていたことが、5歳の子にも等身大で伝わってほしいなと、そんな思いで対話をしました」

もう一つは、熟語をできるだけ使わないようにする。

「前に、植物専門の先生が『色素』という言葉を使って、すぐに『色の素』と言い換えました。熟語をそのまま言ってしまうと子どもにはわかりづらい。多くの回答者は訓読みで、わかりやすくしゃべる工夫をしています。作家・井上ひさしさんの言葉で『むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをゆかいに、ゆかいなことをまじめに』とありますよね。あれが基本かなと思っています」