教科書どおりの回答だけではダメ
長年の回答者歴の中で、国司さんをひどく困らせた質問はどのようなものだったのか。
一つは、「空は、どこからどこまでが空ですか?」。国司さんが振り返る。
「小学1年生だったかな。どんな話をしようか迷っていると、ちょうどスタジオに広辞苑があって、そこにはこう書いてあったんです。『空は、天と地の間のむなしいところ』(注第四版までの語釈)と」
国司さんは感心したものの、これでは回答にならないと思案を巡らす。そこで「地面があってその上の空気があるところ。紙飛行機が飛ぶところは空なんだよ」と答えた。すると子どもが「じゃあ、地面から10センチ離れたところも空なんですか?」と聞いてきた。
「科学電話なのだから、始めから大気圏には対流圏や成層圏、中間圏、熱圏というものがあって、高度100キロメートル以上は宇宙空間になるといった話をしてもいいのですが、それだと『空はどこから』の回答にはなりません。そもそも青空と星空でも違う。随分と苦労しましたが、逐一説明していきました」
もう一つ、国司さんが思い出すのが、流れ星に関する質問だ。
20年ほど前に「流れ星がパッと光ったときに、3回願いごとをすると叶いますか?」という質問があった。それに対して、国司さんは「叶いますよ」と言い切った。すると、放送局に抗議の電話が来たという。「科学なのに、何という答えだ」と。
そうした意見は受け入れつつも、国司さんはこう考える。
「もちろん科学的な話をするに越したことはありません。ただ、子どもと一緒に話をする中でお互いに納得し合い、努力することの大切さを伝え、最後は『どうもありがとうございました』と、挨拶して終われれば、結果としていいんじゃないのかな」
必ずしも教科書どおりの答えだけを伝えるのが、子ども科学電話相談の役割ではないということだ。