体験者の人生とオカルトの交差点とは!?

・豊島圭介『東大怪談 東大生が体験した本当に怖い話』(サイゾー、電子書籍あり)

東大卒の映画監督・豊島圭介が、東大出身者11名にインタビューした怪談実話本である。こう聞くと昨今の「東大ブーム」に便乗した企画本に思えるが、読んでみると印象はだいぶ異なっている。

この本に登場する東大出身者たちは、病院で奇妙な物音を聞いたり、巨大な能面のような顔を見たり、宇宙人と交信したりとさまざまな経験をしている。こうした異様な出来事は、かれらの歩んできた人生や高い学歴と関係があるのか? 本書はそうしたデリケートかつ興味深い問題に、巧みなインタビューを通して切り込んでいる。

絵に描いたようなエリート街道を歩いた人から、ゴミ屋敷で育った人まで、いろいろな東大生が登場するが、「並行世界」に足を踏み入れたという男性のエピソードが群を抜いて印象的。ネグレクトや虐待を受けて育ったこの男性は、ある日、近所の山の中で「牛人間」を目撃する……。人間の複雑さに触れて、思わず唸ってしまうような怪談である。

通常、怪談本では体験者の人生にスポットが当たることはほぼない。しかし『東大怪談』はあえてそこに注目することで、オカルトと人生が交差する瞬間を浮き彫りにしてみせた。ユニークな企画が見事にはまった、2022年前半のヒット作だ。

閲覧注意! マニアが心底震え上がった、極上にして最怖の怪談本5選_03
出典:豊島圭介『東大怪談 東大生が体験した本当に怖い話』(サイゾー刊)