恋愛に消極的だった圭吾は、ある日あやめに出会って突然激しい恋に落ちた。だが、あやめは他にも恋愛相手がいる「ポリアモリー」だった。相手の多様性を尊重しようとする気持ちと嫉妬や逡巡の交わるなかで圭吾がたどり着いた結論は――。
もうノンノ読者全員に無料で配布したい(自腹で)! と思うくらい最高の小説に出会ってしまった。今もっとも注目されている若手作家、大前粟生さんの最新作は純度100%の恋愛小説で、人を好きになる気持ちってこんなふうにいきいきとしていて素敵なものだったなあということを思い出させてくれるさわやかな作品。
同性愛、多様性、パワハラやジェンダー問題……など、現在恋愛について考えるときに出てくるトピックスを全部盛りにしながら、偏見や常識にとらわれずに自分らしく生きる登場人物たちの姿もかっこよくて、全員を好きになってしまう。
現在恋愛中で苦しい気持ちを抱えている人にはもちろん、恋愛や性のことを億劫に感じている人にこそ読んでほしい1 冊。あなたが恋愛のことで苦しいとしたら、それは自分のせいじゃなくて社会のせいかもしれないから。「こうでなければ」という固定観念を捨てて自分らしい恋愛をするために。2022年らしいこの1冊、ぜひ読んでみてください!
恋愛の多様性に分け入っていく2冊
複数の人と恋愛関係を築き、それを相手にオープンにしていくポリアモリーの考え方について自身の体験をもとに伝えるエッセイ。浮気とどう違う? 相手の反応は? なども分かりやすく描かれている。
バスケ部のエース・塚森がゲイであることをインスタに投稿するとたちまちバズり、学校中が大騒ぎになった。塚森を慕う後輩や隠れゲイの高校生、そして本人。それぞれの1週間の変化を描く青春群像劇。
●はなだ ななこ
店長を務めた経験もある名物書店員。著書『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年のこと』はドラマ化もされた。
2022年5月号掲載
選書・原文/花田菜々子 web構成/轟木愛美 web編成/内山英理