実際、2018年の大阪桐蔭は個人の力のみならず、選手マネジメントも素晴らしかった。

センバツ後の4月から5月におこなわれた春季大阪大会では、怪我やコンディションに配慮して、エースの柿木や4番の藤原をベンチ外にしながらも大会を制する。続く春季近畿地区大会では藤原恭太が復帰したものの、柿木と宮崎抜きでこの年のセンバツ決勝で対戦した智弁和歌山を下して優勝した。

ちなみにセンバツから試合に出続けていたのは、中川・根尾・山田・青地の4人のみ。主力以外も起用しながら、春季大会を勝ち抜いた。この時点で、選手層が厚く主将・中川を中心にチームとしての完成度は相当高かった。

この夏の大阪桐蔭の勝ち上がり方を振り返ると、大阪府予選は非常に苦しい試合がいくつかあった。それが顕著に現れたのが、準々決勝の金光大阪戦と準決勝の履正社戦だ。

まず、金光大阪戦ではスライダーの切れ味鋭い左腕の久下奨太と鰺坂由樹を交互に投げさせる小刻みな継投策に、わずか2点しか得点できなかった。

準決勝の相手の履正社は先発として、今大会初先発の濱内太陽を起用。大阪桐蔭にとっては想定外の起用だったことだろう。大阪桐蔭は根尾が先発し、両校の先発が6回まで3安打に抑える投手戦となった。そのような状況で大阪桐蔭は、7回に藤原がチャンスを作り、根尾がタイムリーを放ち先制。青地斗舞のタイムリーなどで3点差をつけて優位に試合を進めた。

しかし履正社は、このままでは終わらず、疲れが見え始めた根尾をたたみ掛けた。7回裏に1年生ながら5番に座り、のちにチームを夏の甲子園優勝(2019年)に導いた小深田大地(現・横浜DeNAベイスターズ)の2塁打を足掛かりに1点を返す。8回裏には筒井大成、西山虎太郎の連打で1点差。その後、主将の濱内太陽の一塁ゴロで追いつく。さらに、途中出場の6番、松原任耶が浮いた球を左中間に放ち逆転に成功した。

1点ビハインドの状況で9回の攻撃を迎えた大阪桐蔭だが、焦る様子は全くなく冷静だった。代打の俵藤夏冴がヒットで出塁し、続く石川瑞貴のバントミスがあったものの、宮崎・中川・藤原・根尾の連続四球で追いつく。そして、山田がタイムリーを放ち、大阪桐蔭が逆転に成功。最後はエースの柿木が抑えてこの激戦を勝利した。

その年のセンバツ準決勝の三重戦でも劣勢の場面を跳ね返していたが、この試合も勝者のメンタリティや集中力の高さを見せつけるような戦いぶりだった。

甲子園出場後は、作新学院戦と高岡商戦は僅差の試合を勝利。沖学園戦と済美戦は逆転勝利した。僅差から逆転勝ちまでバリエーションが豊かな試合展開で勝ち上がり、準々決勝以降は優位に試合を進めていった。

準々決勝の浦和学院戦は、渡辺勇太郎(現・埼玉西武ライオンズ)を攻略して勝利。この試合は、藤原・根尾のアベック弾も出た。準決勝の済美戦は、クリーンアップに打点がなかったものの、石川・山田のタイムリーで済美のエース山口直哉を打ち崩した。

そして決勝は、この大会の「主人公」だった吉田輝星を擁する金足農業。その勢いを圧倒的な実力で跳ね返すかのように、13点を積み重ねて勝利。この春夏連覇は史上初の2度目の春夏連覇となった。前年の夏の甲子園3回戦で、仙台育英を相手に9回2死から逆転負けを喫した悔しさを翌年に晴らした。

2018年の大阪桐蔭は、ビハインドの場面を迎えても必ず追いつき逆転する姿が印象的だった。選手の能力はもちろんのこと、西谷監督と選手の冷静さはまさに「勝者のメンタリティ」を体現していたのではないだろうか。