近所に大量繁殖の“野良猫屋敷”。いざ立ち上がった「ノーにゃんこ ノーライフ」な漫画家
8月8日は「世界猫の日」である。漫画『ノーにゃんこノーライフ~僕らの地域ねこ計画~』は、猫と人の共生を目指す“地域猫”を題材にした物語だ。著者である斉藤倫さんは、漫画家の仕事の傍ら猫の保護活動も行っている無類の猫好き。そんな斉藤さんに、自身が経験した保護活動や作品に込めた思いについて話を聞いた。
漫画のキャラクターのモデルとなった女性
――漫画『ノーにゃんこ ノーライフ』では、自宅の庭でたくさん増えてしまった野良猫たちに餌をやるおばあさんの様子が描かれています。こういったエピソードは、斉藤さんの実際の保護活動での経験が元になっているのでしょうか?
経験したので描けたというのはありますね。漫画に登場するキャラクターは、モデルがいるものもあればそうでないものもあります。漫画に出てくる猫屋敷のおばあちゃんは、手術に反対で説得が大変な様子で描かれていますが、実際に私がTNRをしたお屋敷のご夫婦は協力的な方でした。
保護ボランティアのマキのモデルにもなった方はいます。町田市で活動している猫ボランティアの方で、何度か取材させていただきました。あと、猫好きな小学生の絢は、モデルがいるわけではありませんが、地域猫の活動をされている方のセミナーで聞いた「地域の子どもが大人と猫をつなげる役目を果たしたときがあった」というお話を参考にしました。
その他にも、千代田区と連携しながら地域猫の保護活動などを行っている「ちよだニャンとなる会」さんにも取材をして、保護活動や行政とボランティアとの関わりについてお話を聞きました。
――漫画を通して特に伝えたかったメッセージはありますか?
猫の保護活動に関わっている人たちを応援したいという気持ちが大きかったので、そういった人たちの活動や思いを描きたいと思っていました。もう一つ描きたかったテーマは、主人公の蒼と彼を巡る人間ドラマです。愛猫のちいこを亡くし、引きこもって社会から離れてしまっていた蒼が、野良猫をきっかけに地域や保護ボランティアとの関わりが広がり、自分の居場所を見つけていく。そんな再生・復活の物語です。
私は、地域猫のことを説明する「地域猫の学習本」のような話ではなく、猫に興味がない人でも楽しんでもらえる人間ドラマを主軸に描きたいと思っていました。もちろん、猫のボランティアや猫に関わる人たちにはぜひ読んでいただきたいですし、私もとりあえず猫好きの人にはこの本をおすすめしています。猫に関心がない人にも手に取ってもらって、保護猫活動やボランティアについて関心を持ってもらえたら嬉しいですね。また、他にもずっとあたためている猫の漫画のアイデアがあるので、いつか描けたらいいなぁと思っています。
取材・文/堤 美佳子
写真提供/斉藤 倫
ノーにゃんこ ノーライフ 1
〜僕らの地域ねこ計画〜
斉藤 倫
2017年8月25日発売
715円(税込)
B6判/192ページ
ISBN:978-4-8342-3260-8
長年連れ添った愛猫・ちいこを失った藤間蒼。悲しみのあまり、世間との関わりを絶ってひとり部屋に引きこもる蒼の前に、数匹の野良猫が姿を現す。欠けてしまった心の傷を癒すように、部屋を出て猫たちに近づく蒼だが…。猫は今まさに町の住人たちによって捕獲されようとしていて──!?
ノーにゃんこ ノーライフ 2
〜僕らの地域ねこ計画〜
斉藤 倫
2019年1月25日発売
825円(税込)
B6判/192ページ
ISBN:978-4-8342-3276-9
“地域猫”──猫を亡くしたショックから引きこもりがちだった藤間蒼は耳慣れない猫の保護活動に身を置くことになる。行動力があり全身全霊で猫のために尽くす三島マキに触発され、一緒に活動するうちに猫好きな小学生の絢や、多数の猫に餌やりを続ける伊豆田、野良猫問題に頭をなやませる町内会の面々と出会うのだった。様々な考え方の違いと異なる立場の人間たちに触れ、少しずつ自ら活動する一歩を踏み出し始めた蒼は…!?
ノーにゃんこ ノーライフ 3
〜僕らの地域ねこ計画〜
斉藤 倫
2020年12月24日発売
858円(税込)
B6判/192ページ
ISBN:978-4-8342-3297-4
猫屋敷のおばあちゃん・伊豆田の協力をやっと得て、本格的に動き出した野良猫の去勢・避妊手術。そんな時、何者かによる毒餌事件が起こり、関係のない小さい子どもや犬まで危険にさらされることに…。猫のために奔走するマキや町の人たちと繋がりだした藤間蒼の再起をかける決断は? 果たして、人と猫の共存を目指す“地域猫活動”はこの町で実現するのか……!? 完結巻!!