ツタンカーメン、スコーピオンキングなどの、世界に数個、日本ではここだけのお宝が!
渋谷という立地、貸し切りの贅沢な体験も本美術館ならではの魅力だが、なんといってもコレクションの質が素晴らしい。菊川氏が個人的に好きだという、ツタンカーメンの時代(第18王朝の末期)のものも多く揃っている。
まず、入口の「エントランスギャラリー」を抜けると、発掘を支援したイギリスの貴族の部屋をイメージした「パトロン ギャラリー」へ。ここにある「蠍のパレット」は、非常に珍しいもののひとつ。古代の人々は男女問わず化粧を施しており、ラメなどを挽くためにこういったパレットを使っていた。けれど、スコーピオンキングの遺物はなかなかなく、かつ、これほど大きいものは滅多にお目にかかれないそうだ。
また、高官のイニという人物が、ペピ王の命を受けてレバノンに遠征したことが記述された「イニの碑文」も歴史的資料として貴重。古王国時代のレバノン遠征の記述は世界に2点しか発見されておらず、うち1点の上部がこちらに展示されている。ちなみに、下部は東京国立博物館に所蔵されているという。
史実を揺るがした、歴史的記念碑
ツタンカーメン王墓を発見したハワード・カーターの旧蔵品も見られる「発掘小屋 ギャラリー」は、2022年12月18日まで開催している『ファラオ展2022!』のメインスペース。もっとも強大で絶対的な支配者であった、ファラオ23人が遺した遺物を惜しみなく公開している。特筆すべきは、「トトメス4世のメダムド・ステラ」と呼ばれる石碑。反乱を平定した際の記念碑で、本美術館所蔵の碑文によって史実が明らかになった。まさに、“歴史を揺るがした”遺物なのだ。
ほかにも、日本ではここでしか見られないツタンカーメンの指輪や、ホルエムヘブ王の使用痕が見られる杖、世界最古と予想される3千年以上前の風刺画、誰もが知るクレオパトラ7世のコインなどがずらりと並ぶ。
そして、「神殿 ギャラリー」には、その名の通り“神殿の柱”が鎮座。これは、王様の名前が入った柱の一番上の部分だという。プライベートハンドにある神殿の柱は、世界でこのひとつだけと言われている価値ある美術品だ。
さらに美術館の奥に位置する「玄室 ギャラリー」では死者がよみがえることを願い、生き返るまでの物語を著した状態のよい木棺や、“美少女ミイラ”、死者の書、棺に入れられる装飾品などが見られる。真っ暗なギャラリーを懐中電灯で照らすと、壁に謎の扉があることに気づくだろう。見つけた者だけが、その中に眠るお宝を知ることができるのだ。
挙げればキリがない美術品や遺物たちに囲まれ、この夏、歴史ロマンに浸ってみるのもいいのではないだろうか。