スター性重視…「明星」の遺伝子
実は、同作は配給収入50億円でその年の日本公開作のトップに輝いている。これは『タワーリング・インフェルノ』(1974)や『エクソシスト』(1973)を凌ぐ大記録だ。
だが、「ロードショー」は1月号に公開秘話を掲載した以外には、大きな特集はしていない。パニック映画なので掘りさげる余地がほとんどないことに加えて、「ロードショー」の方向性に『ジョーズ』が合致しなかったからだと想像できる。なにしろ『ジョーズ』の主人公はサメ退治に出る3人の平凡なおじさんたちだ。「ロイ・シャイダーの原点」「ロバート・ショウの魅力をさぐる」「リチャード・ドレイファスの休日」といった特集は…組まれることがなかった。
逆に、ハリウッドを代表する美形のロバート・レッドフォードに関しては、『華麗なるヒコーキ野郎』(1975)の公開タイミングということもあって4月号での作品特集のほか、「ドロン、レッドフォードの魅力をさぐる」(1月号)「完全独占インタビュー R・レッドフォード」(10月号)「R・レッドフォードとの3日間」(12月号)とスポットライトを当てている。思えば集英社は1952年創刊の芸能誌「明星」(現Myojo)の版元。アイドルの魅力を伝えるDNAが脈々と息づいているのだろう。
その後「ロードショー」は、『小さな恋のメロディ』(1971)に子役として出演した英女優トレイシー・ハイドを10月号の表紙に初起用。彼女にはほかに代表作がないものの、等身大の愛らしさが受けて、日本では大人気を博すことになる。映画芸能誌の面目躍如といったところだ。