景気後退は中国→米国→日本→EUの順

――欧米のロシアへの経済制裁によって、資源高、穀物不足など経済にもさまざまな影響がうかがえますが、今後はどうなっていくでしょうか?

こうした供給問題については、いまのところなんともならないでしょうね。しかしながら景気が悪くなれば、つまり世界経済がリセッション(景気後退)に突入していけば、コモディティの需要は必ず減るので、上昇した価格は元に戻っていきます。

欧米はインフレ退治に本気で乗り出してきました。繰り返しますが、そのための方法とは、供給を増やせないのであれば、需要を殺す(減らす)しかないのです。だから私は「需要崩壊(Demand Destruction)」が起きるだろうと予測しています。そしてそれは徐々に起きつつあります。

みなさん原油が高いと嘆いているけれど、2008年のリーマン・ショック直前には1バレルあたり140ドルにまで上昇していました。インフレ率を計算して実質価格を割り出すと、その当時の140ドルは、いまならば170ドル~180ドルになります。

そう考えると、いまの120ドルは当時と比べるとそんなに高くはないという捉え方もできるのです。仮にいまの原油価格が180ドルになっていたら、大変なパニックになっているはずです。

コモディティ価格については高いには高いのだけれど、過去のコモディティ・サイクルと比べると、とてつもなく割高という感じではないのです。

――中国経済に関しては土地バブルの崩壊、コロナ禍による都市封鎖などで、実質的に経済は崩壊しているのではないか? と噂されていますが、いかがでしょうか?

中国は実質上のリセッションになっていると思います。詳しくは、『エブリシング・バブルの崩壊』を参考にしてほしいのですが、不動産業も、製造業も、サービス業にしても皆、不調です。

また昨今の銀行の貸し出し比率をみると、2002年レベルにまで落ちています。景気の先行きが見えず不安だから、お金を借りて新たなビジネスに踏み出そうとする人たちが少なくなっている、もしくは、中国の銀行のお金自体が枯渇しかけているのでしょう。融資したものの焦げ付きが多くてニッチもサッチもいかなくなっているかもしれません。

ウクライナ情勢に資源高、世界的なリセッションを睨んだ「資産防衛法」_1

最近よく聞こえてくるのが、中国の地方銀行による預金引き出し停止事件です。中国の投資会社・河南新財富集団傘下の3銀行で約8000億円に上る預金が引き出せない状態が続き、預金者から抗議が殺到しているといいます。

おそらく同投資会社が預金を不動産開発に注ぎ込み焦げ付かせたものと思われますが、今後はこの手の話が山ほど出てくるはずです。

中国はいま、1990年代の日本の不動産バブル崩壊と同じ状況になっているのでしょう。加えてゼロコロナ政策の影響もあって、さらに景気が悪化しているわけです。

中国に続いて米国もリセッションに入りつつあります。それを追って日本とEUもリセッションに向かっていくというのが、私の見立てです。