世界的なリセッションを睨んだ資産防衛法

――今後、世界中がリセッションに染まっていくなか、私たちはどんな方向に投資をすれば、自分の資産を守り、さらには増やしていけるでしょうか?

一連の値上げラッシュに直面した多くの日本人は、デフレマインドからインフレマインドに変えなければいけないと気付いたと思います。やはりこの機会に、資産運用について真剣に考えるべきでしょう。

ただシンプルにインフレから自分の資産を守りたい人は、実物資産の金とか、金と銀のETF(上場投資信託)を買えばいいでしょう。アンティークコインやジュエリーを買う人もいる。これらはインフレが発生すれば、基本的に価値は上がっていく。もしくは価値が守られます。

それだけでなく、少しでも資産を増やしたいと思う人はやはり株式に投資することです。株は基本的にはインフレに連動しますし、経済は止まることなく動いているわけですから、プラスアルファを生み出せる。ですから株は金とは異なり、実質上の資産運用につながります。もちろん、リスクは高くなります。

株式の買い方はさまざまです。日経平均やトピックスなど指数の積み立てでもいいと思います。指数の積み立て投資はドルコスト平均法(一定期間ごとに一定金額で購入する)なので、一番シンプルで長期的な資産形成に向いているでしょう。

余裕資金があって資産を増やしたい人は、セクター(防衛産業、基盤産業、鉄道、空運、観光等)の代表的な銘柄(会社)を買ってみるのも一案です。ほかには、ふだん仕事などでお世話になっているなど自分がよく知っているような銘柄への投資が良いのではないでしょうか。

――よく今の時代は、1929年の大恐慌前に似ているとも言われますが、どう思われますか?

似ているところもありますが、実は歴史上どの時代もユニークなので、まったく同じではありません。また、1929年の大恐慌が長引いた、もしくは大恐慌へと発展していった背景には、当時の金融政策、財政政策が不十分なものであったことが原因として挙げられます。今ではその経験が研究されているので、政策も進化しています。

さまざま持論を述べてきましたが、それでも、われわれはこの先、米国経済が史上稀に見るクラッシュに見舞われることを念頭に置かねばならないでしょう。そのときにはFRBは緩和政策に転じざるを得ず、その瞬間は株式の〝買い〟のタイミングになるはずです。

もしかしたらFRBは日銀のように、株価維持のために直接ETFを購入するという強硬手段に出るかもしれません。そうなれば、米国株はもう一回大きな上昇サイクルに入る可能性が出てきます。

当然ながら、中央銀行がこうした緩和策を永遠に続けられるかどうかはわからないですが……。投資は自己責任なので、日々の経済の動きを注視しながら機敏に反応していくことが求められます。皆さん頑張ってください。

ウクライナ情勢に資源高、世界的なリセッションを睨んだ「資産防衛法」_2
撮影/堀田力丸
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エブリシング・バブルの崩壊
エミン・ユルマズ
ウクライナ情勢に資源高、世界的なリセッションを睨んだ「資産防衛法」_3
2022年3月25日発売
1,760円(税込)
四六判/256ページ
ISBN:978-4-08-786135-8
コロナ禍で空前の金融緩和が行われて3年。インフレ懸念、利上げの必要性を叫ばれてきたが、いよいよ2022年は、FRB(米国の連邦準備理事会)の方針大転換で、3月から利上げが始まり、世界経済のフェーズが変わる。
米国のインフレ率は、2022年1月で前年比8.6%に達し、食料や生活用品が値上げされているばかりか、賃金も上昇している。
しかし日本では、思うように賃金が上がらず、物価の上昇だけが先行する不況下のインフレ、すなわちスタグフレーションが懸念されている。
また米国が撤兵したアフガニスタンの混乱や、ウクライナへのロシア侵攻の懸念など、地政学リスクが増大することによって、原油や天然ガス、小麦などのコモディティ価格が上昇し、ますます世界のインフレに拍車をかける状況となった。
一方、世界経済の牽引車だった中国は、恒大集団の実質的な破綻など不動産バブルの崩壊がささやかれ、景気の後退が懸念されている。
こうした様々な世界経済のほころびが明らかになった2022年、上昇しすぎた世界の株式市場や不動産市場はどうなるのか? 
今後の世界経済はどのように展開していくのか?
すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。
さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。
投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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