現役時代、ガッツポーズをしなかった理由
感情をコントロールするということも、長年意識してきたことのひとつだ。阪神のユニフォームを脱ぐことになった経緯を人に話すと、「もっと怒ってもいいのでは?」という反応も多かった。
ただ、怒っても結果が変わらないのであれば、怒る時間がもったいない。権限を持っていないところを動かそうとするなら、その権限を持つしかない。
プロ野球選手として球団から絶対に戦力外通告を受けたくないと思えば、球団社長になるしかないのだ。とはいえ、球団社長になったとしても、それはそれでまた違った問題が出てくるに決まっている。結局、どのポジションになっても、自分でコントロールできないことについては、どうしようもないのだ。
怒ることで、それが力に変わる人はそれでいい。例えば、監督やコーチから怒られて、「ふざけるな」と思いながら打席に入り、ホームランを打ってしまうバッターもいると思う。
ただ、自分の場合は、感情を抑えられずにイライラして、腹を立てた時の結果が非常に悪かった。高校でピッチャーをやっていた時もそうだった。
冷静に考えられなくなった自分がどれだけ能力を発揮できないかということを、それまでの経験で知っているので、感情をコントロールするということを常に意識しているのだ。
相手に与える影響を考えても、自分が損をする場合が多い。例えば、審判に自分の感情をぶつけてしまったことによって、次の打席でのジャッジに影響するなど、必ずデメリットがあるので、トータルで考えた時にグラウンドでは感情を出さないということを決めていた。
あまりガッツポーズをしないということも、同じ理由だ。試合中にガッツポーズをしたい気持ちになる場面は当然あるのだが、まだ試合が決まっていない場面で、そういうことをするのがどうなのか?という気持ちのほうが強かった。
浮かれすぎてもいけないし、相手の気持ちを奮い立たせてしまってもいけない。感情を出すことのメリット、デメリットを冷静な状態でよく考えてみてはどうだろうか。