「ザッツ エンタテインメント!」
しかし、UCLAで私が受講した「Entertainment Law」の授業の初回、講師からこんな言葉が出て、自分がエンタテインメントの本場で学んでいることを改めて実感しました。
講師は学生たちにこんな質問を投げかけました。
「このように、多大なコストと労力を注ぎ込んで映画を製作しても、配給会社がこれだけの取り分を持っていき、さらに宣伝にこれだけの費用がかかりますから、黒字を生み出す例はむしろ少ない方です。にもかかわらず、なぜ製作会社はこのようなビジネスを続けるのでしょうか」
さすがアメリカ、大教室の授業にもかかわらず、生徒たちは我先にと挙手します。
「劇場公開後に、配信などの二次利用で儲けが出るからではないですか」
「映画の著作権を持っていれば、商品化などのビジネスが可能だからでしょう」
ひと通りそのような意見を聞いた後に、講師は少し笑みを浮かべて、こう言いました。
「どれも間違いとは言えませんが、私の求めていた答えではないですね。答えは、”That’s Entertainment!”です」
“That’s Entertainment!”(ザッツ エンタテインメント!)とは、1974年にMGMが製作したミュージカル映画の題名です。この題名をさり気なく引用した講師の回答は、エンタテインメントビジネスとは、お金ではなく、観るものに一時の感動を与えることを目指すものであるという本質を突いていたような気がします。
私は、一瞬のパフォーマンスのために一生をかけるエンタテインメント、スポーツ、アートといった分野が好きで、法律面からそれをサポートすることにやり甲斐を感じています。また非常に僭越ですが、法律家の存在が、エンタテインメントの健全な発展に必要だと信じていますし、法律を勉強するロースクール・法学部の学生がこの分野を目指してくれればと思っています。この連載を通じて、ぜひ多くの方にエンタテインメント・スポーツ法に興味を持ってもらえれば幸いです。