日本とウクライナは実は隣の隣の国

「それはちょっと残念ですね。なぜなら、本来起きてはいけない戦争のせいでウクライナのことを知っているだけですから。例えばキーウのバレエだったり、有名な詩人やサッカー選手がいることだったり、長い歴史があるウクライナの文化や伝統、恵まれた自然についても知って欲しいですね」

日本に来て早速、10年前から続けているお茶の稽古に通い始めた。

“それでも私が日本に来た理由” ウクライナ人留学生の決意_4
都内から鎌倉までお茶の稽古に通う

「私は裏千家。10年はまだまだです。お茶はとても面白い。『和敬静寂』っていう哲学的な側面もありますし、和菓子も美味しいです。ウクライナと日本は距離的には遠いですけど、真ん中にはロシアしかありません。似ている点もあるんです。例えばウクライナでは日本の花見のように、庭でチェリーを眺める習慣があります。戦争は忘れてはいけませんが、ウクライナのもっと良い面も知ってほしい」

そう力強く語るアナスタシーヤさん。「ウクライナと日本の架け橋はおこがましい」と謙遜するが、自身の研究を通してそんなこともできるのがささやかな希望だ。

“それでも私が日本に来た理由” ウクライナ人留学生の決意_5
スカートの柄のチェリーはウクライナの名産品でもある

取材・文・撮影/水谷竹秀

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