連続フルイニング出場記録が途絶えた理由

例えば、同じランナー一塁という状況でも、ランナーの足の速さによって守備隊形は大きく異なる。6番打者の場合は、4番や5番を打つ選手が一塁ランナーになるケースが多い。この場合、ランナーが盗塁をする可能性が低いため、一塁手がベースを離れて守ることが可能だ。すると、一・二塁間にゴロを打っても捕られることが必然的に増えてしまう。

想定と違う打順での起用になったので、打撃を元に戻そうと思った。だが、キャンプから体に染みつかせてきたものが急に戻るわけではない。なんとか元に戻そうとしている間に、首脳陣からは調子が悪いと判断され、連続試合フルイニング出場も途切れてしまった。
 
もともと、自分のできることに集中しようという考えのもとで野球をやっていたが、なんとかチームから求められる役割を果たそうとした結果、チームにとっても自分にとっても、大きなマイナスになってしまった。

やはり、人の期待に応えようとするあまりに、自分のスタイルを変えてしまった反動の大きさは、自分が思った以上のものだった。自分に反発するだけの力がなかったことも悔やまれたし、同じ失敗をするなら自分の考えのもとで失敗しないといけなかったと思う。

人の感覚を自分に落とし込むという作業をすると、悪くなった時にどうしていいかわからなくなる。すべてが悪循環にはまってしまった感じだった。

それまでのシーズンオフといえば、取り入れたいトレーニングを集中的に行い、自主トレまでバットを1回も振らないというパターンができあがっていた。

だが、2016年シーズンを終えたオフだけはあまりにもバッティングの感覚がおかしかったので、ずっとバットを振り続けて、失った自分の感覚を取り戻すことに必死になった。

2016年のシーズンが散々だったこともあり、「2017年は復活した」という話もされるが、自分にとってはようやく元に戻ったという感覚だった。9月8日には甲子園で2000本安打を達成できたが、もし感覚が戻らないままだったら、この瞬間も迎えることができていなかったかもしれない。