一緒に食卓に混ぜてもらっているような読後感

もちろん、取材の中では先述の「カラクッコ」のように「うーん」と思うような味にも出会うのだが、読む側にとってはその経験すらも楽しそうに映る。堂場さんは、編集者や家族と食事をしながら語り合い、時に愚痴を言ったりしながらも、食べるという行為の幸せを噛みしめているように感じられるのだ。

そしてそれぞれの味が、過去の記憶や様々な知識とつながりながら語られるから、読んでいると一緒に食卓に混ぜてもらって横で話を聞いているような気分になる。きっと堂場さんは、どんな料理でも、単なる味覚うんぬんを超えた部分で楽しめる方なのだろうと思う。

堂場さんが味の描写にどれだけ注意を払っているかは巻末に収録された平松洋子さんとの対談でも語られているが、味覚に自信のない私にでも、食の楽しみを感じさせてくれる、懐が深い一冊だった。

ちなみに、平松洋子さんが対談で語っておられる福岡の「今屋」のホットドッグ、私も大好きなので『弾丸メシ』の続編がスタートした際にはぜひ堂場さんに味わっていただきたい!

あのベストセラー作家も実践! 忙しい人にオススメ『弾丸メシ』3つの掟_c
「今屋」のホットドッグ

文/スズキナオ

『弾丸メシ』(集英社文庫)
堂場 瞬一
あのベストセラー作家も実践! 忙しい人にオススメ『弾丸メシ』3つの掟_d
2022年6月17日発売
638円(税込)
文庫判/240ページ
ISBN:978-4-08-744400-1
出版業界一忙しいと言われる著者は、どんなに時間がなくてもメシは食べるが信条! 弾丸旅と地元メシの面白さが詰まった食&旅エッセイ。
弾丸メシ3つの掟 必ず日帰り/食事は1時間以内に済ませる/絶対に残さない

執筆や取材で多忙を極める著者。だが、どんなに時間がなくてもメシは食べるを信条としている。そこで、必ず日帰り、食事は一時間以内に済ませる、絶対に残さないの三つの掟のもと、弾丸旅で美味いものを食べに行く挑戦を。日本や海外の取材先で出合った発見系謎料理から、身近な餃子まで、グルメとはひと味違う美味いを追求する。食の記憶を呼び覚まし食べる幸せを堪能する、こだわりの食&旅エッセイ集。
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