3つのルールで企画が成立
ある日、人気作家として忙しくお仕事をされている堂場さんが編集者に半ば強引に仕事を依頼される。断ろうとしたところ「料理なら得意ジャンルでしょう?」「いくら忙しくても、一日ぐらいなら何とかなるでしょ」とグイグイ押され、妥協案として「必ず日帰り」「食事は一時間以内に済ませる」「絶対に残さないこと」をルールとした企画が生まれる。
そうして書かれたコラムを集めたものが本書『弾丸メシ』である。
と、こう書けば、堂場さんは嫌々この仕事を引き受けたように思われるかもしれないが、読み進めてみると、堂場さんのノリノリ具合にいい意味で裏切られることになる。
福島県福島市のご当地グルメである「円盤餃子」を食べに行く第1回からしてそうで、円形にずらりと並べられた焼き餃子を一皿30個×2の60個も(同行の編集者も一緒とはいえ)たいらげ、その合間に口直しにと水餃子も食べている。
残さず食べて満腹になり、もうそれで取材としては十分なはずなのに、帰り道には、円盤餃子と同じく福島市の名物だという「プリンパン(パンの真ん中にプリンが入ったものらしい)」を、これも名物の「酪王カフェオレ」で流し込んでいる。さらに帰宅後、おにぎりまで食べる(餃子は米と一緒に食べたい派である堂場さんは、円盤餃子を食べた店のメニューに白飯がないことに物足りなさを感じていたのだ)。なんとも勢いのある食べっぷりである。
“だし汁やタレを一切使わず、日本酒だけで炒りつけるように作るという”東広島の「美酒鍋」。
“焼きそばにトマトソースをかけたものである”という新潟のご当地料理「イタリアン」。
“鯛を炊き込んだもの”と“鯛の刺身にだし汁を絡ませ、白米にぶっかけて食べる”ものとの2種類があるという愛媛の「鯛めし」。
“何とも癖になる味で、地元で人気になるのも納得”だという京都・カフェコレクションの「いわしコンビーフライス」(この「京都 学生メシ編」は文庫版のみの書き下ろし)……今すぐ食べてみたくなって困るようなこれらの料理を、堂場さんはなんとも素晴らしい勢いで味わう。