これからの医療ドラマに必要な3つの要素を考察

これからの医療ドラマにおいても、先に挙げた2つの要素は外せないだろう。

要素1. 象徴的なキャラクター
要素2. 印象的なセリフ


この2点はどんなジャンルにおいても必要な要素ともいえるが、医療ドラマにおいては特に重要であると考える。

他ジャンルにおいては、この2点の力が弱かったとしてもストーリー性があれば補える。ミステリーなら謎解きの精密さ、恋愛ならメインキャラ同士の駆け引きなど……むしろストーリー性をフックとしたほうが好まれる傾向にある。

だがドラマでは、人類にとって普遍的な“生と死”をメインテーマとして扱うことが多く、だがストーリー性としてはすでに申し分ない。このテーマにキャラクターとセリフを工夫することによって、ドラマとしての味を深めていくのが、医療ドラマの正規ルートのように思える。

要素3. ”これまで以上の”リアリティ

さて、3つめの要素として、これからの時代、とくに医療ドラマにおいては“これまで以上”のリアリティが求められるだろう。

それは、新型コロナウイルス流行により、年齢や性別、環境を問わず生死が身近となったからだ。

コロナ禍になる前、私たちにとって生きていることは当たり前であり、死ぬことは何十年も先の未来だった。死の当事者になるのは、まだまだ先のこと。予期せぬ病気や怪我になることはそうそうない。健康な状態で、わざわざ死について考える人のほうが珍しかった。

そんな情勢で見る医療ドラマには、必要以上のリアリティは求められないと筆者は考える。視聴者の想像力で補えるだけの描写と、専門家が見ても違和感のない最低限のファクトさえあれば、ドラマとして成立するはずだ。

だからこそ、これからの医療ドラマには、生身の人間がダイレクトに感じた死生観を、恐れずに反映させる気概が必要なのかもしれない。

そう考えると、今現在、医療ドラマが制作されていない事実にも頷けてしまう。コンプライアンスの重要性も叫ばれる昨今、ドラマとしてのおもしろさを担保しつつリアリティまで追求するのは難しい。それに加えて、単純に医療現場での取材も進めにくいだろう。

今後、象徴的なキャラクターと印象的なセリフで、一般の視聴者にとってもおもしろく、かつ医療従事者へのリスペクトを感じられる名作ドラマが生まれることを期待したい。

文/北村有