「寝た子を起こすな」とバッシングが起きる日本
日本でも性についてまったく教えてはいけないというわけではない。
文科省によれば、「各学校で必要と判断すれば、性について具体的に指導することはできる」そうだが、下記のような前例があったと知ったうえで、あえて性教育を行う教師がどれほどいるだろうか。
2003年、東京の特別支援学校で知的障がいのある子どもに性教育を行ったことを東京都議会議員が批判。指導に当たっていた教員らが処分を受けた(のちに裁判で教員側が勝訴)。
そのほか、2013年には東京都足立区の中学校で行われた性教育が「学習指導要領を逸脱している」と批判された。
これらの性教育バッシングは日本の性教育を大きく後進させたと言わざるを得ない。
事実、現在の小学校の保健体育の教科書では、大人になるにつれて変化する体を、服を着たイラストで表現し、「大人になると体はどのように変化するか話し合いましょう」と問いかけている。
これではもはや学習ではなく、クイズだ。
「セックスについてどう思うか」を子どもに問うオランダ
一方で、「生きた性教育」を行うのがオランダだ。その地域の若者の性意識や性に関する動向を調査し、その実態にあった性教育を行うこともあるのだとか。
中学生の性教育のテキストは、一人一人に「セックスについてどう思うか」について問い、そのうえで男女の身体の仕組みについて学べる内容になっている。
事前に互いの宗教観や価値観を笑わないことをしっかりと伝えたうえで授業を行っていることも、重要なポイントだろう。
また、生理などの生殖の仕組みについても男女で学ぶ。言葉だけで伝えるのではなく、タンポンなど具体的な生理用品類のアイテムを用いて、衛生面や月経の周期についても細かく学習することになっている。
こうした性についての学習は、望まない妊娠を避けたり、若者の貧困を減らしたりすることにもつながる。そうした社会的な問題の解決の糸口にもなる性教育を、日本では国や政治家が拒んでいる。