これこそ劇場で観たい映画なのだ!

ロマンティックなアドベンチャー小説家に扮するサンドラ・ブロック。彼女を誘拐して、お宝が眠る謎の古代都市の道案内をさせるダニエル・ラドクリフ。サンドラを助けに行く、その立派なガタイとは裏腹なへなちょこのモデルにチャニング・テイタム。そして、いいとこ取りで登場するブラッド・ピット。かつて、『インディ・ジョーンズ』シリーズや『ロマンシング・ストーン秘宝の谷』をワクワクしながら笑って見ていたあの楽しさが蘇ってくる。

アイメイクだけは死守! サンドラ姐さん、古代都市へ大冒険!_4

それにしても、とことんお笑い体質のサンドラ姐さんのベテランぶりは、さすがというほかない。過酷なアクションシーンの連続の中で、彼女が一貫して着用しているのがパッツンパッツンにフィットしたスパンコールのオールインワン。しかも派手な紫色! ここはジャングル、ディスコではない。もちろん、この衣装自体がギャグになっているわけだが、こういうキャクター作りを(本人の意思かどうかは別にして)「セクシーさには1ミリも振られずに」やってのけるのだ。だから、エロネタのシーンもカラッとしたもの。チャニングなんて、全裸の前側を彼女に見せるのも、躊躇なし! どちらかというと、姐さんというより兄貴って感じかも。この乾いた魅力が、お笑いには貴重なのだ。ただし、姐さん、たとえ火の中、水の中、濃ゆいアイメイクは落ちることがなかった! そこだけは死守。

アイメイクだけは死守! サンドラ姐さん、古代都市へ大冒険!_6

この豪華なキャスト陣は、コメディとはいかにルックスとのギャップを面白おかしく見せることだというのを心得ていて、冒頭のチャニングのロン毛の王子様ルック。ブラピのイケメンぶりを茶化したヒッピー風の戦闘ルック。それから、ハリポタのイメージも遠くになりつつあるダニエル・ラドクリフは、案外コメディセンスに優れていて、童顔を髭もじゃで覆って財宝を狙う悪役になりきっている。彼らが織りなす大冒険を、大画面で見る楽しさ。家で配信サービースの映画を観るのにちょっと飽きてきたときに、真っ先に劇場で観たいのは、こういう映画ではないだろうか。

アイメイクだけは死守! サンドラ姐さん、古代都市へ大冒険!_1

『ザ・ロストシティ』(2022)
6/24から公開/東和ピクチャーズ配給
監督/アーロン・ニー アダム・ニー
出演/サンドラ・ブロック チャニング・テイタム ダニエル・ラドクリフ ブラッド・ピットほか
https://thelostcity.jp

イラスト・文/石川三千花 写真/Capital Pictures/amanaimages