「嫌なことを忘れるというのはいいことですが…」

地域では、車の部品や台所の金属部分などが黒く変色する現象も相次いだ。硫化水素による腐食が疑われる中、「虹の架け橋」が行なったアンケート調査では、近隣で60台以上のエアコンが同じ時期に故障していたこともわかったという。

60台のエアコンが故障したという(近隣住民提供)
60台のエアコンが故障したという(近隣住民提供)

「エアコンの基板の部分や外の配線が錆びてしまい、エアコンがきかなくなったり、動かなくなったりしていました。エアコンについては、個別では腐食が原因だとわからなかった可能性もありました。

だから私たちは自分で調べて、何件のエアコンが同時期に壊れているという情報をまとめたんです。それが証拠になるだろうと。最終的にはエアコンを使用している年数に応じて、県の方で負担額を決めて補償するという形になりました」

一軒の家でエアコンが故障しただけでは、事故との関連を疑うことは難しい。しかし、周辺の住宅で同じような故障が相次いでいることがわかれば、被害の全体像も見えてくる。住民たちが自ら情報を集め、行政との補償交渉につなげてきたという。

硫化水素の臭いがひどい現場に近い人たちに向けて県が配布した空気清浄機(近隣住民提供)
硫化水素の臭いがひどい現場に近い人たちに向けて県が配布した空気清浄機(近隣住民提供)

事故原因については、県が管理する下水道管が硫化水素によって腐食し、破損したことが陥没につながったと推測されると結論づけられている。下水道管の老朽化や腐食は八潮市だけの問題ではなく、全国各地で起こりうるものだ。

事故からおよそ1年9カ月。復旧工事は今も続いている。木下さんは、これまでの活動を振り返り、最後にこう語った。

「見えないものとの戦いっていうんですかね。硫化水素も目には見えないものですし、次々と金属が腐食していくなど、これまで見たことがないことでした。どこまで影響があり、いつまで続くのか、見えない不安もたくさんありました。

嫌なことを忘れるというのは、それはいいことですし、そうしなきゃいけない部分もあります。でも、私たちは事故を通して私たちしかわからない経験をし、その記録を今しています。二度とこうした事故が起こらないように生かしていきたい、そう思っています」

道路陥没から1年9か月、現場の“今
道路陥没から1年9か月、現場の“今
すべての画像を見る

※「集英社オンライン」では、今回の記事に関する情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(旧Twitter)
@shuon_news  

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班