なぜ春から初夏にクマは荒れるのか? 交尾期に潜む危険性
1986(昭和61)年当時、初めて阿仁のマタギを訪ねた時にも、県猟友会の事務局の方から秋田県内で起きた人身事故で食害が起きていたことを知らされた。その時に聞いた話では、食害に関しては遺族のためにも公表しない方向で了解されていたということであった。
当時はクマ類を保護していくことが検討されていた時代であり、クマの行動に関してもその詳細はつかめていなかった。むしろ当時の私の驚きは、秋田県において人身事故と食害というものがほとんど一連の動きとして猟師や警察に理解されていたことであった。
しかもそれは5、6月など、春から初夏の事故に顕著に見られるという。そこに「交尾期と何らかの関わりがあるのではないか」という疑問を感じたのである。その後、4月中旬から下旬にかけて、春の予察駆除、あるいは予防捕獲(予察駆除は山菜シーズンをひかえて、人々の山野利用が盛んになる前に一定数のツキノワグマを駆除、排除し、追い払うという目的で実施されているもの。
山形県では︑2026年から個体数調整を目的とした春季捕獲という意味合いに代えて3月20日から5月19日までの2か月間に捕獲期間を延長している)に同行しながらオスグマが執拗にメスグマを求めて歩くという話や、その姿を実際に見ながらオスグマの荒々しさを知ったのである。
約1か月後に交尾期を迎えるオスグマは、メスを獲得するためのオス同士の闘いがある。その闘いに勝って初めて子孫を残すチャンスに恵まれるのであるから、体力も体格も冬眠明けから短期間でつくり直さなければならない。
そのようなオスグマが、食料と交尾、さらには交尾後の安定した場所の確保のため最も荒れるのが5、6月から7月である。春から初夏にかけては交尾、秋は越冬に向けての食料の確保、この二つのピークをどう捉えるかが重要な鍵となるに違いない。
文/田口洋美













