「運賃値上げだけでは解決しない」人手不足を脱する2つの方法
では、労働時間を短縮しながら、ドライバーの収入を増やすことは可能なのか。
森田氏は、その方法として「適正な運賃・料金の確保」と「生産性の向上」の2つを挙げる。
「まず必要なのは、適正な運賃・料金を確保して、ドライバーの賃金を増やすための原資を確保することです。そこで重要になるのが、現在制度化が進められている『適正原価』です。単に運賃の値上げを求めるのではなく、全産業平均の賃金水準を踏まえた人件費を原価に反映させ、必要な費用を確保できる取引へと変えていく考え方です。
ただし、運賃の値上げだけが永続的に続くわけではありません。運送事業者によって原価は異なりますし、原価が高い事業者は市場で淘汰される可能性もあります。そこで、もう一つ必要なのが物流の効率化による生産性の向上です。
効率化によって自社の原価を下げながら、荷主へのサービス水準を高め、同時に会社の収益性も向上させる。そして、増えた利益をドライバーの賃金にも配分するのです。これが、労働時間を短縮しながら収入を増やすための2つ目の方法です」
2025年に成立した「トラック適正化二法」では、運送事業の許可更新制や適正原価を下回る運賃・料金の制限などが盛り込まれた。
しかし、制度が整うだけで現場の労働環境が変わるとは限らない。実際に適正な運賃を確保し、それを賃金の改善につなげられるかが問われることになる。
最後に、人手不足を根本から解消するために最も必要なことを聞いた。
「人手不足を抜本的に解消するためには、個々の運送事業者が健全な経営を実現することです。ドライバーの適切な賃金や労働時間を確保し、会社としても適正な利益を上げられるようになれば、業界のイメージやドライバーに対する社会的な評価も変わってくるでしょう。
ただ、それには時間がかかります。喫緊の課題は、まず賃金の原資を増やし、労働条件を改善することです。そのためには運送会社や荷主企業だけでなく、消費者を含むサプライチェーン全体の理解を得る必要があります」
私たちが当たり前のように利用する物流サービス。その安さや便利さは、長年にわたりドライバーの低賃金と長時間労働に支えられてきた側面がある。
「もっと働かなければ稼げない」から「適切な時間働けば十分に稼げる」業界へ。
ドライバーの人手不足を解消するには、運送会社の経営努力だけでなく、荷主企業や消費者も含めた物流のあり方そのものを問い直す必要がありそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部













