「募集しても70代」ドライバーの低賃金はなぜ続くのか
「若い人がなかなか入ってこないんです。募集しても70代の人だったりする」
集英社オンラインで配信したトラック業界の人手不足をめぐる記事で、東京・豊洲市場の青果物配送に携わる中小運送会社のベテランドライバーは、こう窮状を訴えた。
業界歴40年以上の男性によれば、最も稼いでいた時期と比べて、現在の月の手取りは20〜30万円ほど減少。人手が足りず、社長自らトラックを運転することもあるという。
2024年4月に始まったトラックドライバーの時間外労働の上限規制。年間960時間という上限は、月平均に換算すると80時間に相当する。これは一般に「過労死ライン」と呼ばれる長時間労働の目安に匹敵する水準だ。それでもなお、「もっと働かなければ稼げない」という声が上がる現実をどう考えればいいのか。
2024年4月に始まったトラックドライバーの時間外労働の上限規制。長時間労働の是正を目的とした制度だが、現場では収入の確保との両立が課題になっている。
では、なぜトラックドライバーの賃金は他業種と比べて低いのか。
物流ジャーナリストの森田富士夫氏は、その背景を「失われた30余年」と結びつけて説明する。
「トラックドライバーの低賃金、長時間労働の現状は、日本経済の『失われた30余年』との関連で捉える必要があります。
1990年の物流二法の施行とバブル崩壊は、偶然にもほぼ同じ時期に重なりました。バブル崩壊によって多くの荷主企業は経営の再構築を迫られましたが、本来であれば研究開発や生産性向上への投資を進めるべきでした」
だが、実際に企業が進めたのは、森田氏が理想とする経営の立て直しとは異なるものだった。
「多くの企業は正規雇用を減らして非正規雇用を増やすなど、人件費を抑えることで目先の利益を追求しました。その結果、日本の生産性や国民1人当たりのGDPは、先進国の中で相対的に低い水準になっていったのです。
物流でも同じことが起きました。荷主企業は物流そのものを効率化するのではなく、運賃や料金の単価を切り下げることで『物流合理化』を進めてきました。それを可能にしたのが、規制緩和による小規模事業者の増加と、多重下請け構造の形成です。
その末端で実際に荷物を運ぶドライバーの低賃金と長時間労働が、運賃を低く抑える仕組みを支えてきたのです」
荷主企業が人件費を抑えることで競争力を維持してきた構造と、物流業界でドライバーが置かれてきた立場には共通点があると森田氏は指摘する。
「荷主企業では非正規雇用労働者などの低賃金が利益を支える一因となり、物流ではドライバーの低賃金と長時間労働が同じような役割を果たしてきました。
したがって、ドライバーの労働条件を抜本的に改善するには、運送会社だけの努力では限界があります。荷主との商慣行までさかのぼり、適正原価や事業許可の更新制、運送委託の次数制限などを通じて、取引関係そのものを再構築する必要があるのです」













