リスナーが面白い番組を作る
加藤 前の番組からの流れで、「よく知らないパーソナリティだけど聴いてみた」という方がけっこういたんじゃないかな。
朝井 ね。だから、我々のことを何も知らない、本の読者とは全然違う層のリスナーがついてくれました。当時のオールナイトニッポンの二部のリスナーって、もう聴き手としてプロだったんですよ。どういうリアクションをすれば番組が盛り上がるか、我々よりも知っている。生放送の長時間ラジオの作法を心得てる人たちがアシストしてくれている感じでした。
加藤 パーソナリティが誰かとか、関係なかったかもしれない。
朝井 リスナーのほうが深夜ラジオの経験値が高いので、システムとして盛り上げてもらっていたというか。リスナーが面白くないと番組も盛り上がらない、みたいな感じでした。
加藤 リスナーが流れを作ってくれたりね。今、ポッドキャストでやっている『信頼できない語り手』で「感情のゴミ箱」というコーナーがあるんですが、何を送ってもいいという趣旨で、かえって難しいと思うんですよね。でも毎週、本当に面白いものが届くので、そこから話が広がるのがありがたい。
朝井 私たちは話がうまいわけではなくて、本当に意味がないことをしゃべっているので。
加藤 あまり考えずにね。「この悩みに対して、1週間考えてから答える」とかだと、たぶんまるで違うことになってしまうと思います。
朝井 我々、人生相談もしないもんね。音声配信の番組は最終的に人生相談に収束するきらいがありますが、そうならないのが我々のよいところでもあるのかなと。手前みそですが。
加藤 そうそう、お互いが話すことを事前に打ち合わせていないんです。かなりざっくり、朝井くんがテーマというか「こういう出来事を話すから」と伝えてくれるくらいで、最後はどうなるかまでは聞いていない。逆もまた然りで私も言わないので、その場その場の出たとこ勝負でやっていますね。
朝井 失敗したところで、我々は何も痛手はないですし。放送局はあるだろうけど。
加藤 何年か前の『オールナイトニッポン0(ZERO)』で朝井くんが「(わたしたちの関係を評して)共感はできないけど共生はできる」と言っていて、「本当にそうだな」と思った。100パーセント共感することが大事ではないんですよね。
朝井 “We are different but friends.”
(集英社クオータリー『kotoba』2026年秋号より一部抜粋し、修正しています。本文の続きはkotoba本誌でご覧ください)
取材・文=矢内裕子 撮影=川内章弘
2026/9/4
1,900円(税込)
166ページ
特集 ラジオがそばにいてくれる
顔は見えない。映像もない。文字として残るわけでもない。
それでもラジオの言葉は、ときに本や映像以上に深く心に届き、
誰かの背中を押し、私たちの日常に寄り添ってくれることがあります。
いま、「聴く」文化は大きな広がりを見せています。
radikoやポッドキャスト、オーディオブックの普及によって、
新たなリスナーを惹きつけています。
なぜ私たちは誰かの声に耳を傾けるのか。
音声コンテンツはこれからどのような可能性を切り開いていくのか。
本特集では、ラジオと言葉の力、ラジオと本や漫画との関係、
そして音声メディアの未来まで、多彩な書き手や語り手とともに考えます。
Part1 ラジオの力、言葉の力
朝井リョウ×加藤千恵 『信頼できない語り手』の裏側
大西泰斗 「声だけはちょっと自信があったんです」
荻上チキ×武田砂鉄 ニュースをどう伝えるか
宮藤官九郎 愚痴とラジオの意外な関係
田家秀樹×スージー鈴木 音楽を語るラジオ
大森淳郎 戦時下、ラジオ人たちの苦悩と順応
Part2 ラジオと生きる
高橋源一郎 ラジオの子
ハライチ 10年続いた深夜ラジオの「エネルギー」
ヤマノエイ ラジオの漫画が描きたくて漫画家になった
佐倉綾音 「論理」を突き詰め「集団ごっこ」を生きる
タブレット純 ラジオは「通信機」のように
村上謙三久 ラジオ小説はなぜ増えているのか
Part3 ラジオ、次の100年へ
小川 哲×TaiTan×大森時生 ポッドキャストは歌である
アルコ&ピース 文化人の「やばさ」を暴くポッドキャスト
橋本吉史 「一生続けられるコンテンツ」の作り方
ぐんぴぃ×水野太貴 落語家と塾講師――二人が目指す「しゃべりの理想形」
村上謙三久 ポッドキャストをはじめてみた
ラジオ番組のリアルイベントはなぜ増えているのか
出版社音声レーベルの現在地
岡部匡伸 ラジオの形態進化史――日本ラジオ博物館を訪ねて
※〈とじ込み付録〉『さむわんへるつ』ポストカード付き!
【対談】
森 遊机×今井悠也 日本の独自文化 映画パンフがアツい!
【第二四回 開高健ノンフィクション賞 受賞作発表】
上村幸平 『始祖の大地』
【短期集中連載】
腹巻猫 劇伴哲学 藤津亮太
磯部 涼 ルポ川崎2
【連載】
大岡 玲 写真を読む
山下裕二 美を凝視する
山極壽一 ますます「サル化」する人間社会
石井光太 災害遺族をケアする 日本DMORTの挑戦
三宅陽一郎 文学がなければ人工知能はない
入不二基義 脳梗塞、のち哲学
小松由佳 〈新連載〉シリアへ帰る
舟木彩乃 〈新連載〉「いじめ」の心理学
足立倫行 古代史を考えなおす
橋本幸士 物理学者のすごい日記
キリーロバ・ナージャ マルチリンガル・サバイバル
町田麻子 ことば万華鏡 ミュージカルの訳詞の妙技
おほしんたろう おほことば
【kotobaの森】
著者インタビュー 陣野俊史『バンリュー フランス団地映画の軌跡』
マーク・ピーターセン 英語で考えるコトバ
大村次郷 悠久のコトバ
吉川浩満 問う人
町山智浩 映画の台詞
※南陀楼綾繁さんの連載「愛と憎しみの積ん読」は今号休載します。