「品川区ではなく港区」の謎を解くカギは東海道にあった

ちなみに、山手線の駅で初期に開業したところは、すべて主要街道との交差地点、つまりは交通の要衝に設けられている。利用客が見込める場所としての選択である。そして、品川駅の南側の八ツ山橋のところで、東海道は鉄道と交差していた。そこからすぐのところが、品川の宿場町、歩行新宿の北の入口であった。

そして東海道本線は、品川宿の住宅密集地を避け、ずっと西の山側を通された。当時の付近は田畑が広がっていただけ。品川駅は、高輪の台地と海に挟まれた狭い土地を埋め立てて建設した現在地より、南寄りの目黒川を渡る付近の方が駅は造りやすそうで、宿場町からの距離もそう変わらない。

けれども「付近でもっとも整備された道路」は東海道であったと想像に難くない。今でいう駅へのアクセス道路も建設する手間や費用を考えれば、東海道を、そのまま駅前通りにした方がよほど良い。

新橋~品川間の線路は、海中に提を築いて設置されたが、そうした手間を考えても、品川駅の場所は妥当だったと思うのだが、どうだろう。その便利な場所が行政上、たまたま豊島郡~芝区~港区の管轄に合まれていたに過ぎないのだ。一方、品川宿は荏原郡に属していた。明治となって品川県から再編を経て品川区となっている。

鉄道の開業により、品川宿は宿場町としての役割を終え、住宅地、工業地として、東京の一部に組み込まれた形となっている。かつては海が広がっていた東側は、埋め立てによってまったく姿を変えた。

文/土屋武之

『全国駅名、ほんとうの話』(交通新聞社)
土屋武之
『全国駅名、ほんとうの話』(交通新聞社)
2026年10月15日
1210円(税込)
214ページ
ISBN: 978-4330052267
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