「指導者の究極の仕事は止めること」
――山口智規選手を日本のトップクラスにまで強くさせたことは、チームにとってはもちろん、花田監督の指導者としてのキャリアの中でも、とても大きなことのように思います。
“強くさせた”というよりは“強くなってくれた”と言ったほうが的確ですね。そのきっかけは私が作ったかもしれませんが。
ちょっと話が戻りますが、彼は1年の時までは挫折が多かった。2年になって、海外遠征などいろんな経験を積んで、強くなっていったのかな。自分自身でいろいろトライアンドエラーを繰り返しながら、自立した選手に自ら成長していきました。
卒業後も彼の練習を見ていますが、私が練習メニューを組むというよりも、彼自身が立てたメニューを見て、私はちょっとアドバイスをするぐらい。ほとんど“メンター”的な役割ですね。
自分で考えてやれる選手が身近なところにいるのは、学生たちにとって、すごく良い刺激になっています。学生たちとも「こういう練習がしたいのですが、どう思いますか?」といった会話が生まれています。
海外のトップチームのように、指導者と選手とが対等に近い関係にある、私が考えていた理想のチームのあり方に近づいてきているように思います。
――以前、工藤選手や山口竣平選手は一人で練習をすることが多いとおっしゃっていましたが、学生でそれができるのは、なかなか難しいことのように思います。
そうですね。工藤なんかは放っておくと、どんどんやっちゃうので、止めるのが私の仕事です。瀬古さんからは『指導者の究極の仕事は止めること』と言われていましたが。山口竣平にしても、練習をやり過ぎてしまうところがあるので、そういう役割を担っています。
――単純に考えたら、チームとして駅伝に向かっていくにあたっては、みんなに同じ練習を課したほうが楽なのではと思います。個別対応するのは大変ではないでしょうか。
夏合宿では、工藤のように実力がずば抜けている選手は、全体の流れでは物足りない面もあるので、本人と相談して別のメニューを追加したりしています。
また世界ロード選手権に出ていた選手たちは、合宿の途中から抜ける形で試合となったので、帰ってきてから全体とは別で合宿でやっていたメニューをやったりもしました。
確かに個別対応すると大変なので、みんな同じでいいんじゃないかと思う時もありますが、それぞれ実力や体調も違うので、いくつかグループを作ったり、本数を調整したり、可能な限りそれぞれに合ったメニューができるようにはしたいと考えています。
#2【「往路は勝つかもしれない。でも…」花田監督が語った箱根優勝への距離】へつづく
取材・文/和田悟志













