腸内細菌に感染するウイルス

これらのヴァイロームには、アデノウイルス(adenovirus)、ヘルペスウイルス(herpesvirus)、パピローマウイルス(papillomavirus)、レドンドウイルス(redondovirus)、そしてバクテリアに感染するウイルスであるバクテリオファージ(bacteriophage)などがいることが知られている。

そして、これらのウイルスの割合や、他のウイルスの存在プロファイルなどが、ヴァイロームごとに異なる。あるヴァイロームにいるが別のヴァイロームにはいないウイルスもいる一方で、ヘルペスウイルスは、ほぼすべてのヴァイロームに存在すると考えられている。

体内に棲まうウイルスの総数は、じつはほとんどわかっていない。体内に棲まうバクテリアの総数が、人間の細胞数(三七兆個)よりも多いという話をしたが、ウイルスの特徴を考えると、おそらくそれ以上の数のウイルスが、僕たちの体内に存在しているはずである。

O教授は、腸内細菌の研究者だが、腸内フローラの研究をしていくうちに、腸内細菌に感染するウイルス、すなわちバクテリオファージも多種多様に存在し、腸内ヴァイロームを作り上げていることに早くから興味をもっていた。

実験動物の大腸から取り出した腸内フローラ、つまりうんちのことだが、そこから大量のバクテリオファージが常に検出されてきたからである

文/武村政春  写真/shutterstock

微生物になった博士の記録(集英社インターナショナル)
武村 政春
微生物になった博士の記録(集英社インターナショナル)
2026/10/5
2200円(税込)
272ページ
ISBN: 978-4797674880
「ある朝、目覚めたら……」
六人の博士が微生物に変身!

一口に微生物と言っても様々。生活習慣上かなり身近なバクテリアから、生物と密接な関係を構築してきたウイルスまで、概して一般のイメージは悪い。しかしそれは人間の勝手な思い込みにすぎない。本書は、博士自らが、なんと微生物に変身し、その体験を記録した生命科学ファンタジー。ブドウ球菌、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、バクテリオファージなど、微生物の目線で彼らの世界を見てみたい。

【本文より】
人間は、自分たちがこの世界を、そしてこの地球をすべて支配していると思い込んでいる。
人間が勝手に国境を作り、国土なる言い方で分割していること、山を所有するだのしないだの、島を所有するだのしないだの、まるで大自然ですら人間が所有するものだ、みたいな風潮でこの世界が成り立っていると言っても過言ではない。
しかし、僕たちは思い違いをしている。
僕たち人間のこの体の中に、外に、そして表面に、様々な目に見えない生物、すなわち微生物が大量に棲息していて、しかもその生物たちがいなければ、僕たち人間は生きていけないからである。
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