価格はかえって高止まり・再高騰する可能性
さらに、西岡氏によれば、政策の実効性に疑問を感じる、さらに大きな点があるという。
「市場で本当に短期転売を行っているプロの『買取業者(不動産会社)』や投資家の多くは、個人ではなく法人で売買をしていると聞きます。法人の場合、いくら短期で物件を転売しても、かかってくるのは個人の譲渡所得税ではなく『法人税』です」
確かに国土交通省が9月15日に公表した「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引実態の調査・分析について」では、東京23区の2024年分の集計で、1年以内の短期売買に占める法人の割合は新築で81.1%、中古で97.3%だった。
「つまり、個人の短期譲渡税率を80%に上げたところで、法人化しているプロの転売者にはダメージがありません。つらいのは、リスクを取って自分で家を買い、住み替えようとした一般の実需層です」
そして、この短期譲渡税率70〜80%という制度が実際に導入されてしまった場合、日本の住宅市場にはどのような未来が待っているのか。
「まず、中古マンションの売り出し物件はかなり減るでしょう。『今売ったら利益の8割を税金で持っていかれる』と分かっていたら、急な事情がない限り、誰も5〜6年以内には家を売りに出さなくなりますよね。みんな必死で期限までじっと耐えるようになります」
売り出し物件が減るということは、市場における「中古マンションの供給が減少する」ことを意味する。
「需要があるのに供給が減れば、価格は上がります。新築マンションの供給量が減っている中で、中古の供給まで減ったら、市場に残ったわずかな物件を取り合うことになり、価格はかえって高止まり・再高騰する可能性さえあります。デベロッパーだって、周辺の中古供給が減れば強気の価格設定を崩しません。結局、家を買いたい人が一番困る環境が作られるだけです」
短期譲渡の増税は価格を下げるどころか上げる可能性があり、肝心の転売抑制への効果は限定的になる可能性がある。政府は、過去や他国の失敗例を踏まえて、「本当に」国民のためになる税制を検討すべきだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部














