「鉄板の服」を一番上に置く

「着ていく服が決まらない」。かつての私は毎日、服選びに迷い、出かける直前に慌てる日々を過ごしていました。しかし、今は違います。毎朝着るのは、3着のスーツを順番に回すだけ。ワイシャツも、タンスの一番上にあるものをそのまま選びます。これは、服を選ばなくていい仕組み(簡素化ナッジ)です。

そう言うと、「同じような服を着回すだけなんて恥ずかしい」と思う方もいるかもしれません。しかし、私が自信をもってこのナッジをオススメできるのは、他人はあなたの服なんてほとんど見ていないからです。

アメリカで行われた実験を紹介します。大学生の被験者に有名歌手の顔が大きくプリントされた、いわゆる「恥ずかしいTシャツ」を着て、他の学生たち(観察者)数名が待つ実験室に入ってもらいました。

被験者に「何パーセントがTシャツのデザインを覚えていると思う?」と質問したところ、答えの平均は45パーセントでした。しかし、実際に覚えていた観察者は25パーセント以下でした。この実験から、「思っている以上に、人の服を見ていない」ということがわかったのです(自信過剰バイアス)。

自分がお気に入りの3着を決め、それを着回すのでも問題はないはずですよね。それだけで、朝の準備が劇的にラクになります。

忘れたくないものは、玄関のドアノブにかける

私は忙しくなるとすぐに忘れ物をしてしまいます。旅行先のホテルで薬を忘れ、深夜にタクシーで取りに戻り7万円の出費。学会においてメインで使う予定のポスターを忘れて学会発表をキャンセル。

そのときは、「もうこれ以上、忘れ物はしない」と誓ったものの、それでもまた忘れ物をしてしまうのです。

お土産を忘れないように、以前は玄関に置くようにしていましたが、それでも2回連続で忘れました。これは注意バイアス(目立つものでも見落としたことに気づかない心理)の可能性があります。これを機に、根本的な解決策の必要性を痛感しました。

そこでたどり着いたのが、玄関のドアノブに引っかけるという方法(顕著ナッジ)でした。ドアノブは、出かける際、必ず手にする場所であり、忘れようがない場所です。

それ以来、お土産物を忘れることはなくなりました。行動の直前に必ず視界に入る場所を活用すれば、忘れ物は激減します。

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文/竹林正樹 写真/shutterstock 

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