87歳遺族が訴える「国の責任」
一方、全国空襲連と自民党側では、法案を「超党派議連の案」と位置づけられるかをめぐっても認識の違いがあったという。
全国空襲連の運営委員長の黒岩哲彦弁護士によると、今回提出された法案は松島氏が事務局長を務めていた空襲議連が昨年まとめた案を微修正したものだが、全国空襲連と自民党では法案を「超党派議連の案」と位置づけるかどうかをめぐって認識の違いがあり、全国空襲連がそのように外部に説明すると自民党側からは「自民党も含めた案ではないことをはっきりしろ」という趣旨の抗議があったという。
「戦後の長く深い苦しみ、悲しみを全く国は見ないことにしている。そういう状態をこの法で改善してほしい。少なくとも法案を審議して何が問題だったかをしっかり皆さんで考えていただきたい。その扉が閉ざされてしまったということに、とても怒りを感じています」
そう話す河合さんは、救済法が成立する環境はむしろ遠のいているかもしれないと顔を曇らせた。
「戦後新憲法ができて平和国家になって、みんな基本的人権があって平等である、そういう国になったはずなんだけど、一番底辺のところに軍事大国になろうとする考え方がずっと流れていると感じます。だから、軍人は次の戦争をするために大事にしなくちゃいけないから恩給がさっさと復活したけど、一般人に補償なんかしようもんなら、とても財政が立ち行かないから放っとくと。
これまで“遠慮”があって出てこなかったそうした考えが、今どんどん表に出てきていると感じます」
全国空襲連の事務所は、かつて空襲で被災した墨田区にある。雨が降れば天井から水漏れが起きる古いビルの一室だ。
法案は今回廃案になったが、あきらめるわけにはいかないと、河合さんや同年代の犠牲者遺族は次の法案提出に向けた事務作業に追われている。河合さんを含め多くの人は家族を失ってはいるが、法ができても一時金支給の対象にならない人たちだ。
「私は(父が生き残り)孤児になんなかったけど、この人は孤児になっちゃった………」と、傍らにいる同僚を紹介した河合さん。
「やっぱりちゃんと、こんだけひどいことがあったと。で、それは国が戦争したせいだと分かるようにしてほしいですよね」と、願いの原点を口にした。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班












