仮死状態で抱っこした娘につけた名前
神奈川県の藤沢駅から車で約10分。萬福寺の副住職である荒木貴弘さんは、重度の障がいを負った妻・明里さん(50)と愛娘・朝咲(あさひ)ちゃん(10)のケアをしながら、ともに暮らしている。
10年前、出産中の明里さんは約2万~3万分娩に1例ともいわれる羊水塞栓症に。低酸素脳症となり、脳細胞に損傷を受けながら朝咲ちゃんを出産した。ふたりとも、生命の糸が今にも切れそうなほどの緊急事態だった。
「医師からは『一刻も早く、出生届を出してください』と言われました。その後、仮死状態で誕生すると『これで最期になるかもしれないので抱っこしてあげてください』とも言われました」
『朝咲』と名付けた理由を尋ねると、
「出産前、妻と『どうする?』って言いながら、ノートに子どもの名前の候補をたくさん書いていました。でも決まらなかった。でも急ぎで出生届を出さなきゃいけなくなって。僕ひとりじゃ決められない中、そのノートをパッと開いたら、ひとつだけ〇の印がつけられていたんです。
『これか』『そうか、明里はこの名前にしたかったんだな』と思い、『朝咲』に決めました」
どんな深く暗い夜でも、朝は必ず来る。それを知っていれば、どんなに深い闇でも進んでいける。
「昔の政治を司るところを『朝廷』って言いますよね。その朝です。朝っていう漢字には『人が集う』って意味があるんです。そして『咲』には『笑う』という意味もある。
人が集うところで、笑みを作っていく人になってくれるんじゃないかなって。もちろん、本人も笑顔になっていける人になってくれたら」
現在、朝咲ちゃんは小学4年生。歩くためのリハビリも続けている。筋緊張が高くなりやすく、その状態が続くと背骨が曲がって車いすにうまく乗れなくなってしまうため、筋緊張を弱めてリラックスすることが、目標のひとつとなっている。
「妻と娘の介護で毎日、(ベッドや車いすの)上げ下げをしていると、自然と筋トレになっている感じですね。娘は今、25kgあるので」













