戦死者が多い「非ロシア系民族」が多く暮らす地域

これだけの損失を出しながら、ロシアはなぜ侵攻を続けられるのか。その背景には、地方や刑務所から兵員を集め続ける仕組みがある。

地方政府は高額の契約金や給与を掲げて募兵を進めてきた。雇用が乏しく賃金も低い農村部では、軍の提示額が家族の生活を一変させるほどの意味を持つ。

戦争のしわ寄せを受けているのは、首都から遠く離れた地方の住民や少数民族、そして受刑者だ。

経済的、社会的に立場の弱い兵士を前線で消耗させ、その死を覆い隠す。浮かび上がるのは、戦争の痛みを大都市の中間層から遠ざける、ロシア指導部の冷徹な計算である。

ロシアの独立系メディア「メディアゾーナ」と英BBCは、SNSの投稿や地方当局の発表、墓地に刻まれた名前などを基に、ロシア軍の戦死者を特定している。

確認された戦死者が地方別で最も多いのは、バシコルトスタン共和国。2024年9月時点で約2800人だったが、2026年7月までの1年10カ月で1万106人に膨らんだ。タタルスタン共和国も8845人に上る。どちらも非ロシア系民族が多く暮らす地域だ。

バシコルトスタン共和国は、ロシア連邦のウラル山脈南西側に位置する共和国で人口は約400万人。石油などの豊富な地下資源や多民族が暮らす地域として知られている
バシコルトスタン共和国は、ロシア連邦のウラル山脈南西側に位置する共和国で人口は約400万人。石油などの豊富な地下資源や多民族が暮らす地域として知られている
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モスクワ州の戦死者は地方の30分の1

一方、首都モスクワ市の戦死者は男性1万人あたり5人にとどまり、経済的に貧しい地域の30分の1程度だった。

この格差は、部隊の配置だけでは説明できない。メディアゾーナの分析では、2023年以降に死亡した兵士の中心は、侵攻開始後に国防省と契約した「志願兵」だった。

バシコルトスタンやタタルスタンで戦死者が急増した時期は、地方当局が募兵を強化した時期と重なる。

形式上は志願でも、誰もが自由に選択したとは限らない。高等教育を受けた都市部の中間層には、兵役を避けたり国外へ逃れたりすることが比較的多い。

一方、地方の若者や生活困窮者にとって、軍との契約は数少ない収入源となる。「志願」の背後には、愛国心だけでは説明できない経済格差がある。