日本代表を上回ったアンチェロッティ監督の戦術
気になるのは日本代表への評価だ。まず小柳はお気に入りとしてドイツ・ブンデスリーガで活躍する若きボランチを挙げた。
「佐野海舟みたいな代表選手は初めて見ましたね。自分でボールを持ち運んで突破して、シュートまで打って決めちゃう。普通だったらパスを選択するような場面でも一人で何とかしちゃうんですよね。自信がある上に度胸もあって、『こんな選手がいるのか!』と新鮮に驚きました」
とはいえ、ラウンド32で敗戦を喫したブラジル戦については「再び逆転するような気概が見たかったですよね」とこぼす小柳。「相手は名将・アンチェロッティ監督ですからね、ハーフタイムで絶対に戦術を変えてくると思ったんです。そうしたら案の定クロス主体での攻めを選択するようになった。監督としての成功体験があるから、ああいう引き出しが多いんですよね」と、カナリア軍団の勝因を分析する。
北中米W杯から学ぶべき「したたかな情熱」
「サッカーは人生の縮図」という哲学を度々発信してきた小柳。こと北中米W杯の日本代表から学ぶべきポイントは「したたかさ」であるという。
「森保さんは謙虚で素晴らしい人格者ですけど、ピッチ内では嫌な人にならないと。それは選手も同じで、したたかな負けず嫌いにならなきゃいけないんです。例えばアルゼンチンは選手がとにかく必死で、9カ月かけて自転車で観に来るようなサポーターまでいるほど気概がある(笑)。魂がガーッと煮えたぎるような強さがね、必要なんです。やっぱり命を懸けないと」
その口ぶりはこの上なくパッショネイトだ。
最後に、次回の2030年開催となるW杯への展望について尋ねると、「相手が嫌がることをするためには絶対的な技術が必要」と日本代表の課題について厳しくも愛を持って強調した。
「カゼミーロがヘディングを決めたのも正確なクロスがあったからだし、スイス戦の後半でメッシがラウタロ(・マルティネス)の頭に右足で上げたクロスも技術そのものでしょ? ああいうテクニックを手にするための努力にしたたかな情熱が乗って、初めて世界で勝てるんです。各国とも4年後に向けて成長していくだろうし、今から考えないとダメですよ」
ふと「4年後って、私生きてるかしら」と微笑みながらも、右耳にぶら下がったシルバーのサッカーボール型のピアスは鋭く光っていた。
取材・文/風間一慶 撮影/野﨑慧嗣













