福島第一原発の処理水をめぐる偽情報キャンペーン
表玄関を塞がれた工作は、出所を隠した裏口へと重心を移しただけである。サイバー空間における偽情報、そして第三者を装ったプロキシ工作。これこそが現在進行形の脅威だ。
その典型が、福島第一原発のALPS処理水をめぐる偽情報キャンペーンである。中国は科学的根拠のないままIAEAの評価を欠陥扱いし、「処理水」を「核汚染水」と言い換えて恐怖を煽った。
注目すべきは、その手口だ。2011年の震災直後に作られた放射性物質の拡散シミュレーション画像を、あたかも現在の放出の影響であるかのように見せかける投稿が、大量のボットアカウントによって日本語と中国語の空間に一斉に流し込まれた。
台湾のサイバーセキュリティ企業TEAMT5の調査により、この世論操作システムは、中国系ネットワークとの関連が指摘されている。
つまり、我々がSNS上で目にする処理水をめぐる投稿の一部には、誤情報や出所不明の拡散が含まれていたのだ。
偽情報で「軍事的威圧」
偽情報の捏造は、軍事的な威圧と結びつくと一層たちが悪い。
2016年12月、中国国防省は航空自衛隊のF-15戦闘機2機が中国軍機に対しデコイ・フレアを発射したという虚偽の非難を、自衛隊機の写真とともに世界へ発信した。
自衛隊を「危険で挑発的な組織」と国際社会に印象づけるための、絵に描いたような世論戦であり法律戦である。
台湾に対してはさらに露骨だ。ペロシ米下院議長の訪台に合わせた軍事演習の際、中国国営メディアは「兵士が肉眼で見える距離から台湾軍の軍艦を偵察している」とする臨戦態勢の写真を世界に配信した。
だが台湾ファクトチェックセンターらの分析で、兵士の視線の不一致、フェンスの不自然な高さ、光と影の矛盾が指摘され、加工・改変の疑いが強いと指摘された。官製メディアを起点に偽の映像を「事実」として世界へ流通させ、事実らしくロンダリングし人々の恐怖を煽る。手口はここまで成熟している。













