要塞を維持するために、プーチンは身内を叩き始めた

「もちろん、政府高官や軍関係者は大統領に都合の良い話ばかりを聞かせるものだ」「彼らは大統領に嘘をついている。それがプーチンが築き上げた体制の仕組みなのだ」(クレムリン内部の情報提供者)

「(上層部の多くは)現在、認識段階にある」「彼らは戦場と経済の両面で高まる問題を認識してはいるものの、それに対抗する計画は持っていない」「彼らは、これが下降傾向にあることは理解している。だが、彼らが『では、どう対処すべきか?』と問うたという話は聞いたことがない」(欧州・諜報当局の高官)

独裁とは、最高権力者が現実から最も遠い場所に座る構造のことだ。プーチンはいま、自分で築いた情報の要塞の中で、敗北を勝利と読み違えている。その要塞を維持するために、プーチンは身内を叩き始めた。

ウクライナのウクラインスカ・プラウダ紙が5月24日に報じたところによれば、2024年5月、長年の国防相セルゲイ・ショイグが事実上更迭され、経済テクノクラートのアンドレイ・ベロウソフが後任に座って以降、軍高官の逮捕が止まらない。

ティムール・イワノフ元副大臣、人事局長ユーリ・クズネツォフ中将、通信局長ワジム・シャマリン中将、第58軍元司令官イワン・ポポフ少将。少なくとも10名が職を追われ、うち8名が拘束された。

2026年3月には、ショイグの腹心ルスラン・ツァリコフ元第一副大臣が12件の横領罪で逮捕され、子供や母親名義のものまで含めて55億ルーブル相当の資産が差し押さえられた。これは過去四半世紀のプーチン政権で最大規模の粛清である。

彼らの罪状は「ウクライナでの作戦失敗」ではなく「汚職」

注目すべきは、彼らの罪状がどれも「ウクライナでの作戦失敗」ではなく「汚職」だという点だ。負けた将軍を負けた罪で裁けば、戦争そのものの失敗を認めることになる。だから横領の名で叩く。

能力より忠誠を選ぶ恣意的な人事は、戦争遂行に不可欠な軍の官僚機構を内側から壊し、戦う将軍たちの怒りと不安を増幅させている。粛清は虚構を守るが、組織を殺していくだろう。

ウクライナのゼレンスキー大統領
ウクライナのゼレンスキー大統領

経済も同じ病に侵されている。モスクワ・タイムズ紙が6月5日に報じたところによれば、2024年に4.9%の成長を誇った「過熱」は終わった。

フォーラム直前、アレクサンドル・ノヴァク副首相は2026年のGDP成長率予測を1.3%から0.4%へ、約1ポイントも下方修正した。国営銀行VTBですら、その0.5%前後すら危ういと見ている。