「普通に使っていれば安全」という常識は通用しない
ジョンソクCEOは、日本の未来について、次のように語った。
「日本市場におけるバッテリー専用の消火器や消火パッドの規模は、およそ3000億円という巨大な金額に達すると予測している。電池火災に対する防衛市場はこれからが始まりであり、ビジネスの視点から見れば非常に有望な市場であることは間違いない。
しかし、数字は明るい未来だけを意味するわけではない。市場規模が3000億円に達するという予測は、裏を返せば、市場規模に等しい危険性が日本の至る所に静かに潜んでいるという事実を示している。
ビジネスチャンスの大きさは、日常的に直面する危機がいかに差し迫っているかを証明する残酷な指標でもある。人々の安全を守るための投資が、かつてない規模で必要とされている証拠でもある」
私たちは便利で強力なエネルギーを手に入れた代償として、四六時中、火災の危険と隣り合わせの生活を送るようになった。
「普通に使っていれば安全」という常識も通用しなくなっている。
火災は「いつも通り使用していた」「要因不明」が4割以上
東京消防庁の調査によれば、モバイルバッテリー火災の要因のうち、「いつも通り使用していた」あるいは「要因不明」とされるケースが全体の4割以上を占めている。強い衝撃を与えたり、暑い車内に放置したりといった明確な誤った扱いがなくても火災は突然起きる。
製品評価技術基盤機構の調査では、事故の一歩手前であるヒヤリハットの事例として、「本体が膨張した」「変形した」という報告が最多となっている。
少しでも膨らみを感じたら直ちに使用を中止して適切に処分する––––かすかな兆候を見逃さない知識が、命を守る境界線だ。安さにひかれて飛びつかず、信頼できるメーカーの製品を慎重に選ぶ姿勢は防衛の第一歩である。
リチウムイオン電池の火災は、誤用がなくとも突如発生し、従来の消火法が通用しない致命的なリスクを孕んでいる。利便性の代償として私たちは常に危険と隣り合わせにいる。命を守るためには、安さに惑わされず信頼できる製品を選び、本体の膨張などの微小な兆候を見逃さない、消費者一人一人の高い防衛意識が不可欠だ。
文/小倉健一













