「ヤンキーを扱う企画は昔から一定の数字を取っていた」
会場では、単に昔の不良文化を並べるのではなく、その時代のクリエイティビティや遊び心も前面に出す。
象徴的なのが、ゼロから制作したという改造バイクや自転車だ。
さらに、パンチングマシーンや、「タイマン」と銘打った腕相撲ブースなど、来場者自身が身体を使って参加できる仕掛けも並ぶ。
実際、会場では学生服を身にまとい、改造バイクにまたがって記念撮影を楽しむ来場者の姿も見られた。
増田さんは、そうした展示の背景にある、ヤンキー文化によって培われた“創造性”についてこう語った。
「昔のヤンキー文化って、いま見るとすごくクリエイティブなんです。
限られたお金や物の中で、自分たちなりのカッコよさを作ろうとしていたし、調べれば正解が出る時代じゃなかったからこそ、手持ちのもので工夫して美学を形にしていた。
その不格好さも含めて、いまの目線で見ると新鮮なんだと思います。
それに僕は、ただ見るだけの企画展ではなく、五感を使って楽しめる体験型のイベントをやりたかった。
自転車やバイクは、ただ派手な展示品として置くのではなく、実際に乗ることができます。学生服や特攻服も、実際に暴走族をしていた人たちから借りたもので、着ることができる。
ヤンキー文化には、濃さや熱量があるし、少し “禁忌”に触れるような感覚もある。そういう振り切ったものだからこそ、体験としての面白さにつながるんじゃないかと思いました」
増田さんは、自身が当時のヤンキー文化を実体験として知る立場ではないからこそ、企画にあたっては、その時代を生きた人々の“生の声”を重視してきたという。
イベントの監修に携わった“ヤンキー界の重鎮”こと青少年不良文化評論家の岩橋健一郎さん(59)は、ヤンキー文化の魅力と本質についてこう語る。
「ヤンキー文化がいまおもしろがられているのは、懐かしさだけではないと思うんです。
私は40年以上、ドキュメンタリーやバラエティ番組でヤンキーのキャスティングに関わってきましたが、ヤンキーを扱う企画は昔から一定の数字を取っていた。つまり、ずっと需要があったということなんです。
ただ、いま響いているのは、コアな不良文化そのものではない。
ヤンキーになれなかったけど憧れていた人たち、いわば“ライトツッパリ”の感覚に向けたものが、いちばん広く届いているんです。
そういう層に向けた動きは10年以上前から続いてきたし、その流れの中で決定打になったのがNetflixで配信された恋愛リアリティ番組の『ラヴ上等』だったと思います。
あの作品で、ヤンキーの強さや怖さだけじゃなく、仲間との結束や礼儀、不器用さや可愛げまで含めた“人間くささ”が魅力として届いた。
ヤンキー文化には日本の“裏文化”として独特のおもしろさがある。無難さが求められる時代だからこそ、振り切った熱量が、あらためて人を惹きつけているんじゃないでしょうか」
かつては時代遅れの記号として扱われがちだったヤンキー文化だが、いまは懐古、憧れ、体験の対象として幅広く受容されつつある。ヤンキー文化の再浮上は、時代の側の変化を映す現象なのかもしれない。
取材・文/鮫島りん 集英社オンライン編集部ニュース班














