繊維事業の技術を最大化した「ヒートテック」
東レの復活の物語を完成させたのは、その卓越した高分子技術を応用した先端素材の成功です。東レの炭素繊維「トレカ」は、鉄よりも軽く、アルミニウムよりも強いという究極の素材であり、同社は同分野で断トツの世界首位を誇っています。
この炭素繊維複合材(CFRP)は、米国のボーイング787や欧州のエアバスA350など、次世代航空機の構造材に採用されており、見えないところで世界を支える素材となっています。
さらに、2006年にはユニクロを運営するファーストリテイリングと戦略的事業提携を結び、あの「ヒートテック」の開発に成功しました。
これは、東レの「水分を吸収すると発熱する」という画期的な繊維技術と、ユニクロの販売力が結びついた結果であり、斜陽事業を成長産業へと大復活させた象徴的な事例となりました。
三井グループ内での「独立」の気風
東レは三井グループの主要企業ですが、その経営は常に「独立」の気風が強いものでした。
1990年には、三井東圧化学、三井石油化学との「三社合併構想」が持ち上がりましたが、これを破談にしました。その理由として、高シェア製品の独占禁止法への懸念や、企業文化の融合の難しさを挙げ、三井の結束よりも「事業の合理性」を優先したのです。
東レの研究開発報告書には、「The Deeper, the Newer(より深く、より新しく)」いう研究哲学が記されています。東レの歴史は、技術者としての誇りと、市場に迎合しない反骨精神が、企業をいかに強くするかを示しています。
また、そのような姿勢を貫く東レを今なお三井グループ内に留める三井の気風も、「人の三井」を感じさせる気がしてなりません。
文/山川清弘 写真/shutterstock
2026/3/24
1,900円(税込)
344ページ
ISBN: 978-4868011347
「たちまち3刷決定!
東洋経済オンライン、集英社オンラインなどで
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麻布競馬場さん推薦!!
就活中に読みたかった!
歴史学にして地政学……
日本経済の「空気」を言語化してみせた驚異の一冊。
「住友系の企業の接待で、うっかりキリンビールを注文してしまい、場の空気が一瞬で〝やらかした〟感じに変わった」
そんな失敗談を、みなさんは耳にしたことはあるでしょうか。もしかしたら、ご自身が冷や汗をかいた経験があるかもしれません。
たかがビール、されどビール。日本のビジネス界には、いまだにこうした「知らなかったでは済まされない不文律」が厳然として存在しています。
これらは決して、昭和の時代の笑い話や、都市伝説の類たぐいではありません。
令和の今でも脈々と受け継がれるグループの歴史、人格、関係性、ルール。日本社会に多大な影響を与え、〝裏で操る〟とも評されることのある旧3大財閥のそれらは「知っておいて損はない、大人のための教養」です。
本書は、単なる企業データ集や業界地図ではありません。
「三菱・三井・住友」という巨大なプリズムを通して、日本経済の構造と、そこに息づくビジネスの「作法」を読み解くための教養書です。
かつて、財閥は日本経済そのものでした。そして今、形を変えた「グループ」は、日本経済のインフラとして、空気のように私たちの生活を取り巻いています。 マンションを買えば、それは三菱地所や三井不動産、住友不動産が建てたものかもしれません。コンビニでおにぎりを買えば、その具材は三菱商事が輸入し、パッケージは三菱ケミカルの素材で作られているかもしれません。車に乗れば、住友ゴム工業のタイヤで走り、三菱電機の電装品が制御し、ENEOS(三菱系)でガソリンを入れているかもしれません。
私たちは知らず知らずのうちに、この3グループの手のひらの上で生活しています。
だからこそ、彼らの論理、彼らの歴史、彼らの不文律を知ることは、日本で働き、暮らし、投資をするうえで、最強の武器となるのです。
本書が、みなさんのビジネスという航海における、確かな「海図」となることを願っています。それでは、知られざる「三菱・三井・住友」の深層世界へ、ご案内しましょう。
(はじめに より)