世界初の全盲の声優
その後、視覚・聴覚障害者のみが通える筑波技術大学へ進学。
大学4年生のとき、両親の了解を得て声優・ラジオの養成所『A&Gアカデミー』の本科に入学。養成所を卒業後、声優事務所に所属するためのオーディションに挑んだ。
「『目が見えないのですが、可能ならオーディションを受けたいです』という趣旨のメールを、片っ端から声優事務所に送り続けました。その時に会ってくださったのが『有限会社アコルト』の滝本壽さんです。『難しいけど挑戦してみたいっていう君の文章に心を打たれた』という趣旨のことを面接のときに言われて、ちょうど10年ぐらい前のことなんですけど、今でも鮮明に覚えています。
そのままアコルトに所属したのですが、当時は舞台をよくやっていたので、目が見えていないと舞台は難しいかもしれないということでナレーターとして育成してもらって。そのつながりでゲームのキャラクターボイスも担当するようになり、声優としての活動もできるようになりました」
声優としての活動の一方で、大学卒業後は一般企業に就職。
「事務所への所属と、システムエンジニアとしての就職がほぼ同時期で、精神的な負担が大きく、会社を退職。2018年からフリーのシステムエンジニアに転身し、プログラミングの仕事と声の仕事を並行する体制を整えました。
声優業をやり始めたころは本当にマイナスからのスタート。点字ディスプレイという端末があることを、業界の人が知らないから、『本当に読めるんだ』と驚かれることも多くて。ただ、声で勝負するという意味では見える・見えないは関係ない。それだけは確信していました」
2020年ごろから朗読の仕事が入り始め、声優業の幅が徐々に広がっていった。キャリアを積み重ねていく中で、当時は主にeスポーツプレイヤーとして活動していた株式会社ePARAに音声制作部門「ePARA Voice」を新たに立ち上げ、プレイヤーと責任者を兼務するかたちとなった。北村さんは自身のナレーター声優業についてこのように思っている。
「福祉関係の番組や視覚障害者向けコンテンツに特化して仕事をすることもできると思うのですが、自分はあくまでいちナレーターとして選んでもらいたい。自分の声を聴いて任せてもらえたら嬉しい」
声で表現することにこだわり続け、念願だった「声優・ナレーター」になった北村さん。表現者として、そして一人のプロフェッショナルとして、声で勝負する彼の挑戦は続く――。
後編では、北村さんのもう一つの顔「eスポーツプレイヤーNAOYA」について話を聞いた。
取材・文/木原みぎわ
(写真/佐藤靖彦)













