「自分も声でなら表現ができる」
彼が全盲でありながらも声優の道を志したのには理由がある。
北村さんは先天性小眼球という病気によって、生まれつき重度の視覚障がいがあった。20歳ごろまでは、「電気がついているのか消えているのかは分かる」「赤と黄色の違いが分かる」程度の視覚だったそうだ。
「小学校に上がる直前くらいで、『どうやら俺の見えている世界と周りの人の見えている世界は違うらしい』と感じました」
視覚障がいがありながらも中学校まで一般学級で過ごしたが、「目が見えないだけで、やっていたことは普通の子どもと一緒でした」と語る。その後、今後の大学進学を見据えて視覚障害者向けの教育を受けてみたいと思ったことから高校からは特別支援学校に進学。そんな彼の青春時代を支えたのが、クリスマスプレゼントにもらったラジオだった。
「野球中継や『オールナイトニッポン』に夢中になり、友達と学校の屋上でラジオパーソナリティごっこをしてました(笑)。架空のお便りまで作ったりして」
耳から入ってくる「声」の情報は北村さんの世界を広げる大事な要素であった。それからというもの彼は「声」の世界に魅了されていく。
自分にとって大きなターニングポイントだったと振り返ったのは、高校3年生の時。
「文化放送が運営する声優・ラジオの養成所『A&Gアカデミー』のウィンターセミナーに参加したんです。ラジオトークのコースで成績が優秀だと文化放送の特別番組に出演できるというのを聞いて、それが目当てで(笑)。
ラジオドラマコースのほかに演技コースがあったのですが、どうせなら全部まとめて受けてみようと思ってチャレンジしてみました。そしたら意外と演技のレッスンが面白かったんですよね。
当時の演技の先生が言った『人って生まれながらに表現者です』という言葉が胸に響いて、“自分も声でなら表現ができる”と思いました。それが声優を目指すようになったきっかけです」













