自己負担の研修費、1年の研修期間…厳しい条件にSNSでは「誰がなるの?」の声

先日Xでは、いのちの電話に関する以下のポストが話題となった。

〈いのちの電話の相談員になるには自費で約4万円の研修費を払って半年〜1年ほどの研修期間を経てようやく相談員になれるらしい。そして給料は一切出ない。〉

このポストに対しては「何でそれでやりたいと思って実際になる人がいるんだろう」、「誰がやるんだ……?」などのコメントが寄せられ、金銭的、また時間的余裕がなければ務めることが難しい相談員について、どういったきっかけで始めるのか疑問に思う人が多いようだった。研修費も合宿費用を含めると7万円を超える。

そこで今回は日本で最初のいのちの電話センターとして開局した『社会福祉法人いのちの電話(東京)』へ向かった。

「社会福祉法人いのちの電話(東京)」(撮影/集英社オンライン)
「社会福祉法人いのちの電話(東京)」(撮影/集英社オンライン)
すべての画像を見る

「ボランティアなんて一切興味なかったけど…」今年12年目のベテラン相談員

最初に話を聞いたのはFさん(60代・女性・専業主婦)。相談員歴は今年で12年目だというベテランだ。

そんなFさんだが、相談員を始めるまではボランティアには一切興味がなかったという。

「いのちの電話を始めるまでは、まったくボランティア活動はしたことなかったんです。ただ母がずっとボランティア活動をしていて、身近で見ていたのですが、“なぜお金にならない、つらいことを自らやるのだろう”と不思議に思っていて、ボランティア活動自体に興味はありませんでした。

しかし自分が50代半ばの年齢になって、ふと“これから先の人生、どう生きよう”と悩んだんです。そんなときに、なにか人の役に立ちたいと考え始めたこと、また周囲のご縁などもあり、相談員を志しました。

私にとっては最初のボランティア活動ですが、この時にようやく母の気持ちがわかった気がしたんです」(Fさん)

相談員歴12年目のFさん(写真/集英社オンライン)
相談員歴12年目のFさん(写真/集英社オンライン)

年齢による心境の変化によっていのちの電話の相談員を目指し始めたのだか、やはり相談員になるための研修はかなり厳しかったようだ。

「最初の方は研修生同士でのロールプレイ方式の研修で、徐々に現場に赴き、実践的に学んでいきました。デリケートな心情の方をどう対処するのかというノウハウをまったく知らない状態だったので、最初は“自分にできることが何もない”と、途方もなく無力に感じて焦りましたね。

実践練習では、実際に相談者の方と通話をしますが、“下手なことを言ってはいけない”という重圧、そして想像以上の現場の厳しさを思い知りました」(Fさん)

12年相談員を続けてきたFさんが、とある相談者との忘れられない思い出を語ってくれた。

「何年も前なんですが、とある相談者さんが外出する前に電話をかけてきて、他愛もない話をして、最後電話を切る前に私が“いってらっしゃい”と言いました。すると少し間があいてから“いってきます”と返してくださって。

その時にふと“ああ、なんだか家族みたいだな”って感じました。相手の名前も顔も知らないですし、何気ないやり取りでしたけど、心に“あたたかいもの”が残ったんです。

電話相談はけっしてたやすいものではないですが、相談者の方とのかかわりの中で、何かに気づかされたり、癒やされたりすることもあるんです」(Fさん)