「大過なく」の大切さがわかるのは定年間際から

40代までは「攻めの姿勢」がいい。起業などのチャレンジもおすすめです。ただし、定年5年前は「大過なく」もしくは「無難」にシフトしてください。それはなぜか?

40代の頃、40代向けの本の取材で、私の親戚の中で出世頭と言われていたD氏に後進へのアドバイスを求めたところ、即座に返ってきたのが「大過なく」の一言でした。

どんな話が聞けるのか、ノートを広げてメモを取る準備万端だった私は、その意外な言葉に拍子抜けしてしまい、思わず「え?」と聞き返しました。

「無難」よりはややポジティブなニュアンスを感じ取ったものの、あまりに「守りの姿勢」ではないかと感じたからです。

親戚なので、身内の私に「あまり無理はするなよ」と言ってくれたのかもしませんが、もっと攻めたアドバイスが聞けると思っていたので、少々がっかりしました。

D氏は東大法学部を卒業後、エリート官僚として主要ポストを歴任し、天下りして最後は独立行政法人の理事長の職に就いていました。その理事長室で取材していた時のことです。

発言の真意をよくよく聞いてみると、D氏と同期で某省庁へ入省した20数人は、メンタルの問題、重病、不倫、コンプライアンス違反などでひとり、またひとりと離職し、最後まで仕事を全うできたのは、たった4人だったそうです。

東大法学部卒のD氏と同期で某省庁へ入省した20数人は、メンタルの問題、重病、不倫、コンプライアンス違反などで離職し、最後まで仕事を全うできたのは、たった4人だったという(写真はイメージです・PhotoAC)
東大法学部卒のD氏と同期で某省庁へ入省した20数人は、メンタルの問題、重病、不倫、コンプライアンス違反などで離職し、最後まで仕事を全うできたのは、たった4人だったという(写真はイメージです・PhotoAC)
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ただ、「大過なく」のエピソードは、40代向けの本のコンセプトとは真逆に近い内容だったので、そのときは載せませんでした。

しかし、私自身も還暦を過ぎ、定年をテーマにした本書を執筆するにあたって、「大過なく」の意味の本質がようやく理解できるようになりました。

私の大学時代のクラスメイトを見渡してみると、この年齢まで「大過なく」過ごせた人がいかに希少かを思い知らされます。

卒業から40年近く経ち、今でも付き合いのある10人前後を思い浮かべても、D氏が言ったようなメンタルの問題、重病、不倫、コンプライアンス違反などで苦しんだ過去が散見されます。まるで予言のようにぴったり当てはまっているのです。

糖尿病、脳梗塞を患ったクラスメイトはそれぞれ55歳で早期定年しました。

うつ病、不倫、パートナーの事故死や自殺を経験した友人もいます。