北朝鮮に映る二つの日本
かつて、日本には在日朝鮮人の帰還事業を契機に、1971年から物資や親族訪問などのために年に20往復する北朝鮮との連絡船があったと聞きました。在日朝鮮人の方たちが、北朝鮮に住む親族宛に日本のものをたくさん届けていたという話も聞いたことがあります。
脱北してきたアンニさんたちが話していたことですが、当時、北朝鮮には日本からたくさんの物資が届いたため、北朝鮮の方たちも日本製品は質がいいということを知っているそうです。日用品はもちろん、服や車、自転車など、あらゆるものにおいて日本製は素晴らしいと言っていました。
しかし、北朝鮮は自由にものを仕入れたりすることができない国のため、個人の自由で外国から物を手に入れることはできません。とくに、今はそうした物資のやり取りも簡単ではなくなってしまったそうですが、それでも今でも北朝鮮の方たちは、日本製品の素晴らしさを知っているといいます。
さらに、これは少し歴史的な部分も関係していると思いますが、北朝鮮には韓国よりもたくさんの日本語が残っていて、今でもそれを北朝鮮の言葉として使っているそうです。
例えば、「満タン」という単語は、かつては韓国でも使われていましたが、今はあまり使われていません。しかし、北朝鮮では日本語と同じ意味で今でも使われていて、日本語由来の言葉ということも知らずに使っているそうです。
脱北者の方々と話をしていると、会話の中に時々日本語の単語が使われているので、「それは日本語ですよ」と私が教えてあげると、「えぇ、そうなの? 知らなかった!」と驚かれます。
学校などでは、日本のことを「敵対国」や「悪」のように教えるのに、日本語がそのまま残っていたり、日本のものも使っていたりするので、脱北者の方々も「なんだか不思議なことですね」と言っていました。
北朝鮮では、日本を「敵対国」と教える、いわゆる反日教育が行われているといいますが、脱北者の方の話を聞くと、学校教育だけでなく反日ドラマの制作にもとても力を入れていると感じました。
韓国でもそのようなドラマが制作されているのですが、反日ドラマに登場する日本人は、「朝鮮」や「この野郎」といった悪口の決まり文句を使います。面白いことに、北朝鮮で制作される反日ドラマでも、悪として描かれる日本人は、同様のセリフを言うそうです。私が日本語を学び始めるよりも前から知っていた日本語もそのような悪口でした。脱北者の方々と話をしていると、同じような単語を知っていたのがとても不思議でした。
ただ一つ、反日ドラマにおいて異なることがあるとすると、北朝鮮の方たちは、そうしたドラマに出てくる日本人がいまだに日本には存在していると思っているのだとか。
今の時代、反日ドラマに出てくるような日本人は、さすがにいないとわかると思うのですが、北朝鮮では情報が統制されているために、今の日本についての正しい情報がなかなか入ってきません。そのため、反日ドラマに出てくる日本人というのは、今でも存在するリアルな姿だと思ってしまうのかもしれません。
#2に続く
文/ジュジュワールド 写真/Shutterstock













