エスカレーターマナーが向上している名古屋市
市の調査では、立ち止まって利用する人の割合は2022年度の78.7%から、2024年度には93.3%まで上昇したという。数字だけを見れば、「片側空け」は着実に崩れつつある。
では、実際の現場はどうなのか。
今年11月、名古屋を訪れた。新幹線で名古屋駅に降り立つと、最初に目に入ったのは、きれいに片側へ寄ったエスカレーターだった。県外からの利用者も多い名古屋駅構内などでは、条例の存在はほとんど意識されていないのだろう。
ただ、駅から少し離れると空気は一変する。相変わらず片側を空けている列もあるが、2列で並ぶエスカレーターも確かに存在した。また、左側に寄っているエスカレーターで、試しに右側に立ってみると、後ろに続く人が、まるで思い出したかのように右側にも乗り、2列で並び始めた。
市が啓発するマナーは確かに浸透しているようだが、それを実行するかどうかは、まだ少し勇気がいるという状況なのだろうか。
こうした地域差のなかで、今年11月、福岡市もまたエスカレーターマナーの改善に動き出した。
福岡市地下鉄では、LiDARセンサーとAI解析を使い、エスカレーター上で歩行が検知された場合や、片側だけが空いて混雑している場合に、自動で音声による注意喚起を行なう仕組みを導入した。
福岡市交通局営業部営業課の担当者に、導入の背景について聞いてみた。
「これまでも駅の表示や床サイン、アナウンスなど、さまざまな形で利用マナーの周知は行なってきました。ただ、マナーの浸透をさらに進めるには、次に何ができるかを考える必要がありました。検討するなかで、名古屋市の実証実験なども参考にし、効果が見込めると判断しました」
気になる導入後の効果については、まだ検証段階。しかし、一定の効果が出ていると感じているようで、今後はデータをもとに、効果を検証し、公表していく予定だという。
とはいえ、市民からの反応も、決して一色ではない。
「肯定的なご意見をいただく一方で、『音が大きい』といった声もあります。まだ始めたばかりですので、そうしたお声を踏まえながら、調整しつつ運用している段階です」













