街の本屋が辿るべき未来とは

本屋の売り上げは、書籍と雑誌とコミックに大別されますが、大型書店を別にすると、街の本屋の売上は雑誌とコミックがその半分を占めていました。一方、諸外国の本屋は書籍が売上の大半です。日本ではメディアの王様であった雑誌の衰退は今後も避けられません。

出版物売り上げ推移(電子書籍除く) 出典:出版科学研究所
出版物売り上げ推移(電子書籍除く) 出典:出版科学研究所

コミックにも往時の勢いはなく、それが街の本屋の凋落に繋がっています。それにも関わらず、日本の出版界は雑誌・コミックを中心とする商慣習や物流網のままで、時代の変化に対応した変革がまったく進んでいません。

拙著「2028年街から書店が消える日」にて、このタイトルにあるような、ネガティブな予想をし、出版関係者からお叱りの声をいただくことになりましたが、この予想は日々現実の数字へと変わっているのが現状と言わざるを得ません。

こうした厳しい状況の中で、本屋が生き残るためには、従来のビジネスモデルを根本から見直す必要があります。海外の書店では、書籍販売だけでなく、カフェやイベントスペースを併設し、地域コミュニティの拠点としての役割を果たすことで再生を果たしています。アメリカやドイツでは、リアル書店の価値が見直され、多くの独立系書店が復活の兆しを見せています。

日本の本屋もまた、この流れに学ぶべき時が来ていて、その動きも一部では見られます。しかしながら、最も大切なのは本屋が書籍で収益を上げるようになる事です。その為には再販制度(出版社が決めた価格でしか本を販売できない制度)や委託制度(売れ残っても返品※できる制度)の見直しに、書店の粗利益率の引き上げ、本屋と出版社との直接取引の強化など、業界全体の構造改革が求められています。

通常の書店流通(コンビニ含む)とネット書店(電子書籍含む)のフロー図
通常の書店流通(コンビニ含む)とネット書店(電子書籍含む)のフロー図

そして本屋自身が単なる本だけの販売の場ではなく、文化と知的な出会いの場としての価値を再発見し、読者に新たな体験を提供することが不可欠です。

このまま何も手を打たなければ近い将来、街の本屋は消えてしまうでしょう。しかし、本屋が自らの価値を再定義し、読者との新しい関係を築くことで、未来はまだ変えられるはずです。

2025年12月に閉業した秋葉原「万世書房」(撮影/集英社オンライン編集部)
2025年12月に閉業した秋葉原「万世書房」(撮影/集英社オンライン編集部)
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文/小島俊一

『街の本屋は誰に殺されているのか?』(日本経営センター)
小島俊一
『街の本屋は誰に殺されているのか?#1』(日本経営センター)
2025年11月4日
1,760円(税込)
176ページ
ISBN: 978-4910017846

本書は、日本で街の本屋が
急速に消えている理由を探る。

戦後の出版界は
再販・委託制度などに守られ発展したが、
構造を変えられず衰退。

1996年に2万5000店あった本屋は
2023年に7000店を下回った。

他国では維持・微増しているのに
日本だけが急減している。

読書離れではなく雑誌市場の崩壊と
構造的問題が要因である。

本書は歴史的背景と海外比較、
現場の成功事例を通じて、
出版界の制度疲労を明らかにし、
本屋を文化と知の拠点として再定義、
未来に残す意義を問い直す。

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