「発信しない」というリスクマネジメント
富裕層の中には、SNSを意識的に使わない、投稿はしないという方が少なくありません。その背景には、単なる習慣や好みを超えた情報管理の意識の高さがあります。資産やビジネス、人間関係に影響力を持つ立場にあるほど、「何を発信し、何を見せるか」という選択自体がリスクマネジメントになるのです。
実際、近年の税務調査ではSNSへの投稿が証拠として扱われることも珍しくありません。帳簿上は業務出張となっていても、SNSに「家族旅行」の写真が載っていれば整合性を疑われます。写真の日付と経費の記録が合っているかどうか――こうした意図しない投稿が課税リスクを生むことさえあります。
さらに、富裕層は交友関係が広く深いものです。誰とどこで会ったか、何を食べたかといった何気ない投稿が、本人が意図しなくても第三者の情報やプライバシー、あるいは契約や投資案件に関わる事実を示唆してしまう場合もあります。
だからこそ、彼らは「見せない」という選択をとります。発信する以上は責任が伴う――その前提があるから、「無防備に発信するくらいなら最初から関わらない」という姿勢になるのです。
派手に見せるのではなく、あえて「SNSで発信しない」ことが、富裕層にとっての自己防衛なのです。
すべてをやめる必要はありません。けれど「見せない自由」を一部でも選んでみると、意外なほど心が軽くなり、集中力も戻ってきます。













