中国人の爆買いも鈍ってきている背景

折しも、高市首相の台湾をめぐる集団的自衛権に関する発言をきっかけに中国の習近平政権が日本政府に対して経済的な圧力を加えたり、日本に居住する中国人が活用してきた「経営・管理ビザ」の取得要件が厳しくなったりと中国人によるインバウンド投資には逆風が吹きすさぶ。

この環境下であえてリスクをとらないというのは自然な流れだ。

タワマンが売れなくなりつつある中、人々は何を買っているのか。その答えの一つが、高級戸建て住宅だ。

写真はイメージです
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「あの住友林業が企画しているだけあって、かなり本気だ」

中堅ハウスメーカーに勤めるB氏はこう舌を巻く。高級注文住宅のイメージが強い住友林業だが、「邸宅分譲プロジェクト」として高級分譲住宅の販売を開始。

「1区画の敷地面積150㎡以上、延床面積120㎡以上を目安として展開します」と、タワマンでは実現できない広々とした居住空間をアピールする。

第一弾として販売した「フォレストガーデンGrande洗足」は2億6000万円台という価格にもかかわらず全4戸が即完売したという。

湾岸タワマンを売却してこうした高級戸建てを選ぶ人

高級戸建て住宅に力を入れるのは住友林業だけではない。

「プラウド」シリーズで分譲マンション業界の超大手である野村不動産は近年、「都心型戸建」と銘打ち、城南エリアを中心に2億円前後の高級戸建てを販売している。

タカマツハウス、トヨタホームといったメーカーも続々とこの分野に参入しているが、こちらは湾岸のタワマンと違って売れ行きは好調だという。

面白いのが、湾岸タワマンを売却してこうした高級戸建てを選ぶ人が足元で増えていることだ。湾岸エリアは都心からの距離が近いことが大きなメリットであり、それが共働きの夫婦に選ばれていた。

前述の住友林業のフォレストガーデンGrande洗足も目黒線洗足駅徒歩7分と、都心からの距離でいえば湾岸エリアに劣る。

他社が手掛ける物件も笹塚や下高井戸、自由が丘といった、人気エリアではあるが都心からの距離はさほど近いとは言えない。マンションに比べ、戸建ては立地面で不利であることは否めない。

にもかかわらず、なぜ戸建てが選ばれるのか。

「湾岸エリアは私立中学校が少ないので、子供の進学を機に引っ越すケースが多い」と前述のB氏。湾岸エリアに多く住むパワーカップルは高学歴なことが多く、小学校までは公立でも、将来を見越して中学受験をさせるケースが多い。

しかし、歴史的に埋立地で人が住んでいなかった湾岸エリアの近隣には名門と呼ばれる進学校は少ない。学校によっては朝5時台に起きる必要があり、長時間通学は睡眠時間や勉強時間に支障が出るという研究もある。

結局、子供の進学を考えると、学校が集積する城南エリアのほうが都合が良いというのだ。