初決勝組の全員に十分すぎる優勝の可能性

もちろん、初決勝組の台頭は大会を揺らした。めぞんの会場を包み込んだ一体感、ドンデコルテの鋭い着眼点、豪快キャプテンやたくろうのパワーも準決勝の会場で強く感じられた。それだけに、中心に浮かび上がってくる二つの影がやはり異常なのだ。

この荒れに荒れた年を“順当に”勝ち抜いたという事実は、実は最も順当ではない。大会の新陳代謝が高速化するほど、常連であり続ける難易度は跳ね上がる。2025年の準決勝を象徴する景色は、個性的な新顔の躍動ではなく、この大波を平然と駆け抜けたように感じさせる真空ジェシカとヤーレンズの2組の存在。

3年連続3回目のヤーレンズⓒM-1グランプリ事務局
3年連続3回目のヤーレンズⓒM-1グランプリ事務局
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決勝では再び、“今年の漫才”がぶつかり合う。新しい風が王者を生むのか、それとも常連組が時代のうねりを呑み込みながら頂点に立つのか。今年ほど予想のつかない決勝はない。その読みづらさこそ、2025年M-1の最大の魅力になるだろう。

取材・文/ライター神山