最適化された自分

私がアルゴリズムと呼んでいるものは「レコメンド(おすすめ)」と「パーソナライズ(個人化)」の二つの要素のことである。

つまり、個人個人の見たものに合わせて(パーソナライズ)、それぞれに合った情報をおすすめしてくれる(レコメンド)。それこそがアルゴリズムの仕組みである。より多く見るように最適化される。その結果、私たちの前には、選ばなくても勝手におすすめの情報が現れるようになる。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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するとどうなるか。自分で選ぶ必要がなくなるのだ。凄い話である。つまり、アルゴリズムが変えたのは、自分はどんな作品をいいと思っていて、どんな固有性があるのか――「自分らしさ」がどうでもよくなったということなのだ。

どんな映像を観たいのか。どんな作品を読みたいのか。どんな動画が好きなのか。すべてアルゴリズムのおすすめによって規定される。だからこそ私たちは、自分がどんなものが好きなのか、考えなくてもいい。

この超情報量が多い社会においては、見たい情報を選び取るだけでひと苦労だ。だからこそ、自分が選ぶのではなく、アルゴリズムが選んでくれるほうがいい。

あなたもそう思ったことがあるのではないか。本屋さんや服屋さんに行くと「本や服がありすぎて何を買えばいいかわからない、誰かに最適解をおすすめしてほしい」と感じる人も多いだろう。そこがプラットフォームは得意なのだ。

糸井重里が著書『インターネット的』(PHP新書)で指摘するように、インターネット的であることがリンク、シェア、フラットだとすれば、プラットフォームによる「最適化」、つまり個人へのおすすめ機能がある世界は、そこに「オート」という機能を持ち込む。

インターネット的=リンク、シェア、フラット
プラットフォーム的=(リンク、シェア、フラットに加えて)オート

自動的に選んでくれる。私たちがこれまで手作業で選んでいたものを、今度は機械がオートで選んでくれるようになる。あなたがどんな界隈に属しているのかをジャッジして、自動でおすすめしてくれる。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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それこそがいまの時代の構造なのである。プラットフォーム社会、とでも呼べばいいのだろうか。

――YouTubeを見ても、Instagramを見ても、TikTokを見ても、Ⅹを見ても、AIに聞いても、私たちは自分で情報を選ばなくていい。アルゴリズムが、自動で見るべき情報をおすすめしてくれる。

それは、どんな情報がほしいのか、選ぶ自分が必要なくなった世界なのだ。欲望する主体が消えた世界である。何を欲したらいいか、誰かが教えてくれる。

現代では、最適化された情報が、オートでおすすめされる。そうなると、自分らしさなんて、必要なくなってくる。