点検作業のために無施錠でスマートキーを車内に置いていて…

逮捕された男は同日午前10時20分ごろ、同区島根の自動車販売店に駐車してあった普通乗用車1台(時価約310万円相当)を窃取した疑いがかけられている。警視庁担当記者が事件の経緯を解説する。

「容疑者はこれまで同店に2回来店していて、スタッフ間でも要注意人物として認識されていたようです。最初の来店が7月4日で、『これを買いたい。午後にお金を持ってきます』とクラウンを指差したものの結局現れず、事件2日前の11月22日の昼ごろにも展示車を見ていたのを目撃されている。

事件当日も存在に気づいたスタッフが『例の人がまた来て、奥の方に消えていきました』とインカムで注意喚起をして間もなく、クラウンがすごい勢いで左折して国道4号を走り去ったのですぐに110番通報した。

男は来店時のアンケートに住所氏名を残していたため、防犯カメラ映像の解析と合わせてすぐに特定されたのです。盗まれたクラウンは試乗車ではなく、商品として展示するために他店から陸送してきた車両でした。ナンバプレートの代わりに『認定中古車』のプレートを付け、点検作業のために無施錠でスマートキーを車内に置きっぱなしにしていたのを、男に狙われたようです」

凄惨な事故現場(写真/共同通信社)
凄惨な事故現場(写真/共同通信社)
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通報を受けた警視庁のパトカーが男の運転する盗難車を発見、追跡を始めたのは約2時間後の同日午後0時半ごろ。車は暴走し、横断歩道を渡っていたロタキオさんをはね、歩道に乗り上げて約100メートル走行し、杉本さんら歩行者4人をはねた後、車道に戻ってトラックに衝突、ガードレールに突っ込んで止まった。暴走中の多重事故でトラックの運転手ら6人がけがを負った。

「第一事故現場は時速約70キロでブレーキ痕はなく、歩道に乗り上げてからも時速約60キロという相当なスピードで走っている。目撃証言などから赤信号を無視した可能性もあり、警視庁は道路交通法違反(ひき逃げ)や自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致死傷)容疑も視野に入れて調べを進めています。

しかし、刑事責任能力の有無を判断するため、今後は鑑定留置の必要性も浮上してくるとみられます」(前出・警視庁担当記者)

防犯カメラに記録されていた、逮捕された男が運転する白いクラウン
防犯カメラに記録されていた、逮捕された男が運転する白いクラウン